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例えばの存在意義
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「佐助、甘味を作ってくれぬか。」
いつものように、従者に伺いをたててそういう。
「・・・もちろんです。」
俺は早速作りにかかる。
丁寧に手早く。
出来た団子を持って、あの人のもとへ向かう。
「どうぞ。」
「いつも、すまぬな。」
「いえ、貴方様のお役に立てることが何よりもの幸せでございます。」
「・・・そうか。」
主は、おいしそうに団子を食す。
さっきの話が嘘のように感じられる。
「・・・幸村様、ここ暫く(しばらく)甘味を食されていなかったとか・・・。何か御座いましたか?」
聞いてどうするんだろう。
何も出来やしないのに。
もぐ・・・。
主の手が止まる。
「・・・。」
ごく。
主は団子を飲み込むとこちらを見た。
「・・・どこで聞いたのだ。」
「あ、申し訳ありません。」
「いや、そうではないのだ。」
「・・・食堂の者に。」
「・・・そうか。やはりな・・・。」
「・・・あの・・・。」
「その通りだ。俺はここ暫く甘味を食していない。」
「どうして。」
「・・・佐助の・・・。」
「・・・え?」
「・・・佐助の甘味が良いのだ。」
「・・・そ、それは。」
「お主の心のこもった団子が食いたいのだ。」
「・・・。」
忍びに心はいらないはずなのに。
当の昔に捨ててきたはずなのに。
「・・・幸村様。」
「だから、ずっと。佐助。甘味を作ってくれ。」
初めて命じられた。
こんなに嬉しいことを。
期待してもいいんだろうか。
「仰せのままに。」
この笑顔に絆されても(ほだされても)いいんだろうか。
触れることは許されないけど。
貴方は、隣に居てもいいと、そう仰るのですか。
幸せだ。
俺は今どんな顔をしている?
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