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たとえ俺がお前に必要とされなくなる日が来ても。
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「なあ、幸村。ちょっといいか。」
「む!政宗殿!」
伊達政宗―政宗。
自他ともに認める好敵手と呼べる立場に居る人物だ。
「何の用でござるか!」
いつも何かにつけて競い合う仲であるが故に、思わず幸村は身構える。
政宗から提案される競い事はどれも魅力的で、幸村は政宗と競うことが好きだった。
「Ah・・・違えよ、今回は競い合いじゃねえ。」
「そう、でございまするか。」
少し残念そうに幸村は胸のあたりで固めていた拳をおろした。
「今日の放課後、教室で待っててくれねえか。」
「放課後、でございまするか?某は何も予定は御座いませぬ故、構いませぬが・・・。」
「ならいい。忘れんなよ。」
少し安心した様子で政宗は端整な顔を綻ばせ、自分の席へ戻っていった。
「だぁんな。」
軽い声が聞こえる
幸村のことを、旦那と呼ぶ人物は一人しか思い浮かばない。
「む、佐助か。」
「あたり。」
振り返ると、猿飛佐助―佐助が笑みながら立っている。
佐助は幸村の同居人でもある、いわば兄弟のような存在だ。
佐助と幸村はそれほど歳は離れていない。それなのに、佐助が幸村のことを旦那と呼ぶこと、そして確かにそれほど離れてはいないが、幸村より年上である佐助が同じ学年に居るのには少し訳がある。決して、佐助の頭が悪いなんてことはない。むしろ良いほうかもしれない。佐助に勉強を教えてもらったりすることもある程だ。
今は、過去に色々あった―と言っておくのがよいかもしれない。
「今日、遅くなるの?」
「聞いておったのか。」
「聞こえてきたんだって。」
「それほど遅くはならぬとは思うが、佐助は今日は先に帰っておいてくれ。」
「へいへい、そんなことだろうと思ったよ。・・・早く帰ってきなよ。ご飯、用意して待ってるからね。」
「すまぬな。なるべく早く帰る。」
「んー。」
佐助は軽く返事をしながら自分の席へ歩いていく。
その道中、かすがをからかいながら、だが。
かすが―。
同じクラスの生徒だ。
少し露出が高めな制服の着かたをしていて、男子生徒に対しては気が強いところもあるが、その実、根は優しく女の子らしい一面を持つ恋する乙女である。
幸村には、恋など分かりはしないが。
そのかすがも、一頻(ひとしきり)佐助に咆えた(ほえた)のち、自分の席に座った。
そして、教室の傍らでは、長曾我部元親―元親が、毛利元就―元就と口論を繰り広げていた。
といっても、元就のほうは軽くあしらっているようで、なんとなく見ていて笑みが零れた。
他にも、このクラスには個性的な面々が顔をそろえていた。
その全てが、幸村にとってかけがえのないものなのだ。
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