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たとえ俺がお前に必要とされなくなる日が来ても。
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ドーンドーンドドーン
「これこれ!これだよ!!くぅー!!やっぱり祭りはいいねえ!!」
「祭り・・・。」
「ん?どうしたの旦那。」
「あ、いや、なんでもござらん。」
「どこの店からまわろうか!!なぁ、幸村は何処がいい?」
「某は・・・」
多分、両親のことを思い出したんだろう。
たまに、ああいう顔をすることがあるから。
それも決まって家族とかそういうものに関連するもののとき。
もしかしたら、両親のことも忘れちゃうのかな。
お館様のことも・・・。
だとしたら、なんて悲しい・・・。
「佐助!!早く行くぞ!!」
「あ、はいはい。」
いや、今は。
ただ純粋に今を楽しもう。
少しでも、覚えてもらえるように。
幸村が寂しくならないように。
「よおっし!!狙って狙って!!」
「うむ!!」
幸村が最初に目を付けたのは射的。
パシン!
「おお!当たった、当たったぁ!!」
店番のおじさんが笑いながら手をたたく。
後ろからちらほらと拍手が聞こえてくる。
「うおおおお!!やりましたぞお館さばあああ!!」
「すごいじゃん、幸ちゃん!!」
「うむ!!慶次殿!やりましたぞ!!佐助え!!見ておったか!!」
「見てた見てた。てか、うるさいよ。」
「で、幸ちゃん!次は何するんだい!」
「次は・・・。あ、あれがいいでござる!」
幸村が選んだのは、林檎飴。
シャクリ。
いい音をさせながら幸村が林檎飴をほおばる。
「ゆっくり食べなよ。」
「次は・・・」
それからも、幸村たちは出店を片っ端からあたり、何かしら獲得していた。
「次は・・・あ・・・あれがいいでござる。」
「・・・金魚すくい?」
「うむ。」
「いいじゃんいいじゃん!お祭りっぽくてさ!!」
「はい、お兄さん。これですくってね。」
「あ、かたじけない。」
幸村は、渡された金魚すくい用の紙が貼られた網をくるくると回しながら、一匹の金魚に狙いを定めた。
「うおおお!!」
結果、惨敗。
「そりゃそうでしょ。」
佐助があまりの(荒)技で濡れてしまった幸村をふいてやりながら溜息をつく。
「幸ちゃん・・・。」
あははと慶次が笑いながら、おじさんに
「俺にも一つくれよ!幸村の敵、とってやろうじゃないか!!」
慶次が集中する。
空気が張り詰める。
「はっ!!」
慶次が鮮やかに一匹、また一匹とすくってゆく。
「いいぞ!!頑張れ!!」
あっちこっちから歓声が飛ぶ。
そして・・・
「すごいね、お兄さん!!大漁じゃないか!!」
容器いっぱいになった金魚。
「ああ、でもごめんね、お兄さん。それ、三匹までしか持って帰れないんだよね。選んでくれる?」
「そうなのかい?じゃあ・・・」
なかでも元気そうなのを選んで、袋に入れてもらう。
そしてそれを
「はい、幸ちゃん。」
「む?どうして某に・・・それは慶次殿のものでござろう。」
「いや、幸ちゃんに貰って欲しくて・・・。いらないかい?」
「いえ!欲しいでござる!!」
「はい。」
「感謝いたす!!」
「いいんだよ。幸ちゃんのためにって思ってとったんだからさ。」
「・・・。」
「旦那・・・。」
「幸村・・・。」
手渡された袋に入った金魚をすごくきれいな瞳で見つめる幸村。
「ちょっと、慶次。旦那に見惚れないでよね。」
「それは佐助もだろ?」
「う。」
「この金魚たちは・・・」
「ん?」
「何だい?」
幸村のいきなりの発言に声を返す。
「直ぐに死んでしまうのだろう?」
「・・・うん、出店の金魚なんてそんなもんだよ。」
「だから・・・だからこそ某はこの金魚を大事にするでござる!!大切な命故!!」
「・・・うん。そうだね。」
「幸村の言うとおりだ!小さくても大切な命だからね!!」
ドーンドドーン!
パーンパラパラパラ
「あ、花火!」
「すごいね、これは!!」
「花火・・・。」
キラキラと散ってゆく花火。
一瞬美しい花を咲かせて散ってゆく。
散際まできれいな花火。
「見に行くでござる!!」
「そうだね!!早く行こう!!」
「あ、ちょっと!そこの体力馬鹿!!!あ、くそ!」
走り出す三人。
みんなとても幸せそうに笑っていた。
これはきっと。
いい思い出になったんじゃないか。
幸村がこれを少しでも長く覚えていますように。
佐助はさして信じてもいない神様に祈る真似ごとをしているのに気付き、苦笑をもらす。
どうか神様。
旦那にとって大切な思い出が少しでも多く、残っていますように。
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