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所詮惚れた弱み。
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幸村は、自身を組み伏せている奴―十中八九、同居人である佐助であろう―に掠れた声をかけた。
「・・・佐助・・・どうし、て・・・。」
「どうしてって、それ、本気で言ってる?」
相手が誰だったか当たっていたことに喜んでいる暇などない。
今日は何をしでかしてしまったのだろう。といっても、『彼にとって』だが。
言わずもがな、佐助は『怒ッテ』いる。
それが示すのは危機。
一種の危険信号。
ググ・・・と顔を動かす。
「ねぇ旦那。分かってるでしょねえ・・・。」
一部不自然に速められた口。
暗い部屋に一筋の光が入る。
そこに映し出されたのは、佐助の怒りを帯びた狂い眼であった。
<***>
どうして、こんなことになってしまったのだろう。
否、
いつから、こうなってしまったのだろう。
以前は、優しい佐助だった。
優しくて、厳しくて、温かい。
母親の様な佐助。
壊れた原因は恐らく。
その母親のようだと思っていた佐助から
「好きだ。」
と言われた。
『家族として』だと思っていたが
「愛してる」
と言われた。
その時、自分が破廉恥だと言わなかったのはきっと
「そう、か・・・。」
自分もそうだったからで。
その日から、二人は所謂恋仲になった。
自覚してしまえば早いもので、日々何となく行ってきたアレやソレを、どことなく意識してしまったり。
「初々しい」
と言われたが
「お主もな!」
と赤い顔で言えば、耳まで真っ赤になる佐助を、幸村はとても愛しく想っていた。
だが、その愛が傾き歪みだしたのは、それほど遠くない日のことだった。
「今日は何してたの?」
から始まり
「誰と何処でどんなことをしてたの?」
まで。
徐々に面倒になり、一度しらばっくれたら
「―――――――だよね。」
何時どんな所で何をしていたのか。
全て淀み無く話してきたのだ。
その時、幸村はこの男に恐怖を抱いたのであった。
<***>
苦しい。
思わず床に爪を立てた。
カリッという音が虚しく響いた。
すると
「うぐっ!」
背に片膝を立てて俺を組み伏せていた佐助の重心が動く。
背中の声が近くなった。座ったのだろう。
「ねえねえ旦那?今日は竜の旦那と何してたの?その後、右目の旦那にも会ってたよね?」
「そ、れは・・・。」
俺たちは、戦乱の最中(さなか)、その戦によって命を散らした。
だが、皆、奇なことに、同じ時代、同じ場所に集結したのだ。
幸運にも、関係性もそのまま、前世の記憶と姿を持って転生できたこともあり、政宗殿とは好敵手という関係を築けているし、争いのないこの時代では、皆仲も良く過ごせている。
故に、好敵手であり、大切な友人である政宗殿や片倉殿と話すことは、極当たり前のことではないのか!?
「ねえ・・・?」
「うっ、ぐ」
重心がまた動いた。
声がさらに近くなった。
「ねえ・・・。」
耳元で低く囁かれた。
この声を発したあとは、大抵良くないことをしようとするので、破廉恥ッ!と突き飛ばすのだが、声の主はそうはさせてはくれなかった。
「ぐっ・・・!!」
その時だった。
ピンポーン
この家の聞きなれた呼び鈴の音がした。
そして、
「おーい、幸村ァ!」
この声は・・・。
「なっ!政宗、殿!!」
たすけて。
そう、動く口は音がなかった。
「ねえ、旦那?」
また、佐助が低く囁いた。
その瞬間だった。
全身に鳥肌が立つ。
この場合の『良くないこと』って!?
「逃げ・・・政宗殿ぉ!!!!」
「アハハハハハ・・・」
頭上で笑い声が響く。
「ぐっ・・・!」
佐助が俺の上をどいて、玄関にゆっくりとした足取りで向かって行く。
「おい、幸む・・・あ゛?なんで猿なんだよ。俺はゆき・・・ぐぁ・・・ッ!?」
「う・・・ふ、くっ!」
どうしてこうなってしまったのだろう。
涙が床を濡らす。
これが愛してしまった罰だというのならば、某は甘んじて受け入れましょう。
だから、どうか。
苦しむのは自分だけで・・・。
「佐助・・・、愛しておるぞ。」
「よかった!俺様もだよ!!」
これも、惚れた弱みってヤツなのかもしれない。
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