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点 (佐幸 死ネタ)
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点は点として存在して。
だけど繋がって。
そして。
『点』
ああもう眠くて。
目蓋を閉じればもう、開くのが酷く億劫で。
じわりと。
腕は熱くて。
空から零れるそれは、俺を濡らして。
ああ生きている。
そう実感すれば、確実に近付く最期が見えて。
熱を持った腕は、赤く染まって。
そして広がってゆく。
嗚呼、お前も。
お前も泣いているんだな。
空を見上げて微笑んだ。
空から零れ出る(いずる)雫は、泣き止まなかった。
冷えた身体は妙に。
熱く猛るあの人とは似ても似つかなくて。
俺はやっぱり、目蓋を閉じた。
『個』として存在していた俺は、只の『点』だった。
点は点として存在している。
決して交わらない、筈だった。
気付けば。
俺のまわりには沢山の『点』があって。
そして中心で、あの人が笑っていた。
点は点として存在して。
やがて貴方に繋がりたいと願って。
点は点として存在しなければならない筈なのに。
すべからく点であった俺は。
吸い寄せられるように貴方と繋がり、貴方の背を護ってきた。
もっと。
願えど願えど叶わないが。
貴方の傍に居るときは
あんなに強かったのに。
点は点として存在していて。
そして千切れてしまえば。
それはなにより脆く儚く小さく弱
い。
貴方はそうじゃないから。
きっと。
俺は。
脆く儚く小さく弱い、俺は。
名残惜しく、命惜しく。
点として消えていく。
点は点として存在している。
だけれど俺は。
少なくとも『孤』じゃあなかったよ。
点は。
赤い点を残して。
赤い人を遺して。
閉じた目蓋からは、雫が零れた。
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