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今日はじめてまともに会話をした楓にそう言われ、心情が当たっていることに輝はかなり驚いてしまった。
「佐藤君は凄いね……驚いた……」
「あっ……僕、凄く偉そうなこと言ってるね。ごっ……ごめんなさい」
「いや、当たってるよ。昔から仲がいい奴にも無愛想とは言われていて、でもそいつは俺を良く分かっていて親友でいてくれる。確かに興味がない奴らには、そういう態度を取っていたから俺が悪いんだ」
「いや、櫻木君が悪いというか……うん、悪いところもあるかもしれないけど……って言ったらまた失礼だね! でも、マイナスな言葉って相手がどういう心情で言っているかってあまり分からなくて、受け取った側はそれ以上に色んな想像ができちゃうから向こうが思っている以上に傷つくんだよね。人を傷つけるような言葉からは何もいいものは生まれないよ………」
「佐藤君は人の痛みがわかる優しい人だね」
「やっ……優しくはないよ……。僕もそういう言葉に振り回されてきたことがあったからわかると言うか……」
「そうか……」
これ以上、相手から話さない限り深く聞かないのが輝の性格だ。この空気を引きずらないために話を戻すことにした。
「それで、君の絵に出会えて俺の考えが明確になってね。良ければなんだけど、レシピ本のイラストを佐藤君に描いて欲しいんだ」
「えっ……僕でいいの?」
「もちろん。君以外は考えられないよ」
手を差し伸べてきた輝と握手をすると、自分の小さな手を大きく包みこんでくれる温かさに安らぎのようなものを感じた。
「同い年だし、俺のことは名前で呼んでいいから。敬語も慣れないし、友達として接してくれたら嬉しいよ」
「僕も……楓でいいよ。うちのクラス、サトウが3人もいてややこしいから」
ーーそれと同じようなことをどこかで聞いたような……。と思いつつ小さな手を握りしめる。
「これからよろしく、楓」
少し目元にかかる黒髪から覗く瞳は、何度見ても綺麗でまた鼓動が速くなる。見つめ合いはじめての時の空気をもう一度感じながら、二人はまた会う約束をして別れた。
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