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「輝、どこ行ってたんだよー! 俺を置いていくなんて酷いっ!」
泣き真似をする雅姫を見て、周りにいた連中が「また輝が泣かしている」と指を差し笑っている。
「ごめん、ちょっと人を探していて落し物を届けに行ってた」
「どこに?」
「絵画科」
「絵画科! 俺がこの間行ったとこじゃん!」
「だな。すげぇ遠かった」
「だろう! なんかさー、行ってる途中でくじけそうになるよな」
そう笑って話す雅姫に、つい頷いてしまうほどの距離は確かにあった。さらに質問攻めに合い絵画科ニ年の教室に行ったと言うと、好奇心旺盛な雅姫は前のめりに食いついてきた。
「マジで!? 人気急上昇中の髭じゃない、ぽっちゃりオタクでもない『サトウ』って奴は居た?」
「あ……なんか聞いたことがあると思ったらお前の話だったか」
「おい! 俺の話を右から左に、受け流してただろう!」
「だって興味なかったし。でも俺が話した相手もサトウって名前だったけど、髭もなかったしぽっちゃりもしてなかったな……」
「じゃあ、かっこよかったか? イケメンだった?」
「んー……小さくて目が大きかった。女みたいな顔というか……子犬っぽいというか……」
「なんだよそれ。男か女か犬かはっきりしろ!」
「や……犬ではないし女でもない。多分、男」
「多分てお前……」
ーーそれよりも、今日もやっぱりあの瞳に惹き込まれた。あの薄夕焼け色の景色がどうしても頭から離れない。
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