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最初は開けるつもりはなかった。それでも部屋の鍵を開けたのは、輝が最後に言った「後悔したくない」という言葉に心が動いたからだ。自分も後悔はしたくない。恋が実らないことなど、長い人生の中でこれから先いくつも経験するだろう。それならば自分の気持ちを全て話して、後悔せずに終わりたいと思った。なのに……ドアが開き輝の顔を見た瞬間、泣くしかできなかった。強く抱きしめてくれた輝の体は思っていた以上に大きくて、温かくて、この心地良さを知ってしまった今、戻りたくない、離して欲しくないと欲が一気に溢れた。止められない思いと涙はしばらく続き、その間も輝はずっと抱きしめてくれて頬を伝う涙を綺麗な指で何度も拭ってくれた。
「楓……俺、お前のことが好きだ……」
はじめて見たときと同じ、艶のある漆黒の瞳はやっぱり綺麗だ……なんて見つめていると突然、輝がおかしなことを言ってきた。何が起きたのか分からず、楓は大きな目をさらに見開き流れていた涙ごと固まってしまった。
「自分にこんな気持ちがあるなんて、今まで知らなかった……。知らずに生きてきたから、この気持ちがどういうものなのか、気づくのに時間がかかった……。でもやっと分かったんだ、俺は楓が好きだ」
嘘でも夢でも聞き違いでもなく「好きだ」と言ってくれたその言葉はとても熱くて、固まったままだった体は溶けはじめ一筋の涙が流れた。楓を泣かせたくない輝は戸惑い、どうすれば良いのだろうと困りながらまたその涙を何度も拭いとる。
「楓はどうして泣いているのか、何を考えているのかちゃんと聞きたい……」
どう言えばいいんだろう。何から言えばいいんだろう。沸騰している頭の中はショート寸前で、おかしなことを口走ってしまう。
「輝は……皆んなに優しいから……僕にも……同じこと言ってるだけでしょ……」
「えっ……」
「輝は……輝はいっぱい彼女がいるから……うぅっ……うぐっ……」
沢山いる彼女のことを考えると、また悲しくて涙が出てしまう。
「僕は男だしっ……友達……だからっ……。うぅ……でもっ……でも、みんなにするみたいに……頭撫でて……どうして……どうしてそんなこと……」
「あ……嫌だったのか……。触られたくなかったのか……ごめん……」
「違うっ! 嫌じゃないっ! 違うよ…………触られたくないんじゃない……。どうして……僕だけじゃないの……」
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