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明日、私は死んでいる
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「俺はさ、明日にはもう存在しない人間だからさ、
いや存在しないって言い方は現実的じゃなくて死んでるってことなんだけど、
ま、なんでもいいよ。
だからさ、思うわけよ考えるわけよ、
"今日を素晴らしい日に"なんて。良い最期を迎えたいわけよ。
なので5限の数学で戸田にいびられたのをさ、根に持ってウジウジ悩むような、そんな時間俺にはないの。
1日は誰にでもどんな奴にでも平等に24時間しかないんだよ。神様はケチんぼだね!そんな唯でさえ少ない時間をあんな奴に割いてやるほど俺はロメオじゃない。
つまり何を言いたいのかというと、俺は別にあのクソデブ男に『人の話も聞けないなんて小学生以下だな』って鼻で笑われたことをずっと根に持ってイライラしてるわけないだろう、君。ってことなんだけどねえ!!!聞いてんのかよ倉田!!!」
隣であれだけ散々先生達から注意を受けてる歩きスマホを堂々と行う幼馴染みの長身美男倉田伊織は「聞いてるよ、戸田消えろ、だろ」なんて呑気に欠伸なんかしてるけど、違う違うそうじゃない、やっぱり聞いてなかったじゃないかこの野郎。
「嘘つけ、俺はそんなこと言ってないし」
「そう聞こえた」
「じゃあ訂正しといて、俺は誰しも最期に可愛いのは自分自身なんだよって言ってるの。」
「ふーん、でもお前の両親が最後に可愛かったのはお前だったね」
「ほほお、俺はお前のそういう人様の触れにくい部分を容赦なく踏み付けてくるような姿勢、割と好きだぜ。
でもそれに関しては迷宮入りもいいとこだよ。
俺にはさっぱり分からないけど両親には感謝してるし大好きだよ愛してる」
「でも明日には死んでるんでしょ」
「そうだよ」
「そっか」
そう言った倉田は特に寂しそうにするでも嬉しそうにするでもなくただスマホゲームをしている。
きっとこの男は俺が明日も今日と変わらず息をして歩いて存在していたとしても、それこそ本当に死んでしまっていたとしても何食わぬ顔でいつも通りスマホゲームをして女の子と遊んでいるんだろう。
「倉田、もし俺が死にたくても死ねなくて泣いちゃったらどうする」
「殺してあげる」
「何、即答かよ。それだとお前犯罪者だよ。いいの?俺のために犯罪者になっちゃっても」
「嫌だよ。なんで俺が田辺何かのために人生棒にふらなきゃならないの
「矛盾!!!!!!」
「リップサービスだよ。気付けよそのくらい」
冬が開けて春になって、学年も一つ上がって2年生になった。
日も長くなって冬には見ることの少なかった夕焼けに透けて倉田のミルクティーみたいな瞳と髪が琥珀色になっているのをを横目で堪能しながら、コイツは綺麗だな、なんて考えていた。
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