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☆俺の恋物語【1】フジヒラ
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ここは本の世界。
童話やSFと言った色んな地域に振り分けられているこの世界である男が居た。
その男の名前はフジ。
童話地区の占い師である。仕事内容は人を占うこと。まあ、あまり儲かってるとは言えない仕事なのだが。フジ自身占うことが好きだったし、喜んでくれるお客さんも居たから楽しいと感じていた。でも、そう占うばかりで生活出来るわけではないので普段は本を整理する図書館の管理人の役職についていた。
黒色の髪に勿忘草色の瞳のフジはその優しい性格で皆から慕われていたが、怖がられてもいた。
このお話はそんなフジが恋をするお話である。
――――――――――――――――――――――――
「んー!今日も疲れた〜」
俺は伸びをして、外を見た。今日もいつもと変わらない夜だ。窓を開けると少し肌寒くなったように感じる。もうすぐ冬が来る。
「そろそろ帰るかなぁ」
最終の時間まで残っていた俺は誰も居ない図書館の明かりを消して、図書館を後にした。
家までの路地を歩いていると、ふと薄暗い細道があった。
いつもはこんな細道は怖くて入らないのだけれど、何だか今日はいつもより冒険心が擽られてふらっと吸い込まれる様に中に入った。
そこで俺の運命は狂った様な気がするんだ。
今思えば何で入っちゃったんだろうなぁ…
その細道を奥に向かってずんずんと進んで行くと、何か黒い物がもぞもぞと動いてるのが見えた。
(なんだ…?暗くて良く見えない…)
じっと目を凝らして見ているとその物体が動いた。
「うわぁぁぁ!?!?」
「わぁぁぁぁぁ!?」
俺は情けない悲鳴をあげてしまったが、その物体からも悲鳴が聞こえた。
「なんだ、びっくりした…人かぁ…」
その物体の正体は蹲っていた人だった。
「それはこっちのセリフですよ…何かと思った…」
俺はまだバクバクしてる心臓を抑えようてゆっくり深呼吸した。
「あぁ、ごめんね?驚かせるつもりはなくって…こんな路地に人が入ってくるなんて珍しいからさー」
その人は俺のことをじっと見てきた。
俺もその人を見たくなくても、目が好奇心に揺らいで勝手に見てしまった。
(可愛い顔してんなぁ…)
男の俺から見てもその人は男にしては可愛い顔立ちをしていて萌葱色の瞳で身長が低かった。
黒いパーカーのフードを被っていたから黒い物体に見えたんだろう。
「あの、俺の顔になんか付いてます…?」
「あっ!ごめんね?人に化けたお化けだったらどうしようって思って…でも心配無さそう!」
「当たり前ですよ。化け物って…なんか地味に傷つく…」
「わあっ!本当にごめんね!傷つけるつもりは…」
その人があまりにも慌てるものだから、俺は可笑しくなって笑ってしまった。
「ふふっ、あなたって面白い人ですね。そんなに必死に謝らなくても良いのに」
俺が笑うとその人もふふっと笑みを作った。
「ねぇ、君の名前何て言うの?」
「フジです。そちらは?」
「ヒラだよー。あ、敬語使わなくて大丈夫だよ!パッと見同い年っぽいし!」
「あ、じゃあタメ語で。ってもうこんな時間!そろそろ帰らないと…」
「そうなの?ねぇ、また会えるかなぁ?」
「さぁ…名前しか知らないし…ってか本当に帰らないと!それじゃあ!」
「うん、ばいばーい」
その声を背に俺は家まで走って帰った。
(何か、変な出会いしちゃったなぁ…まぁ、もう会うこともないか…)
そう思いながら俺は薄暗い路地を後にした。
――――――――――――――――――――――――
次の日
「おはようございまーす」
俺はいつも通り図書館に出勤した。
「あ、フジさん。おはようございます。お客様が見えてますよ」
「え、お客様?誰ですか?」
「裏口のドアの外で待って貰ってますので、行ってあげて下さい」
「あ、はい、ありがとうございます」
(お客様って…誰だろ?)
「すいません、お待たせしました…って、あー!」
そこに立っていたのは紛うことなき昨日の変な出会いをした人だった。
「おはよう、フジ!今日も良い天気だねー。遊びに行く?」
「昨日の…ヒラ、だったっけ?」
「うん、ヒラだよー」
「てゆうか、何で俺の職場知ってんの?!」
「調べたんだよー」
「調べた…って仕事は?」
「魔術師だよー」
「魔術師…?なるほど、どうりで…」
この世界の魔術師はとても貴重らしい。
魔術師はある程度素質がないとやって行けない。トップレベルになると国家勢力にもなるらしい。噂で聞いただけだけど、魔術師ってだけで給料も貰えるらしい。仕組みは俺にもよく分からないが。
「まぁ、それはともかく、俺はヒラと違って働かなくちゃいけないから遊べないよ。またね」
「あっ、待ってよ!フジ!俺、1人で寂しいんだ…一緒に居ちゃダメ?」
首をこてんと傾けられると、可愛くてつい許してしまいそうになる。
(いやいや、待て待て、男に可愛いってなんだ!?俺ヤベぇやつじゃん…)
「ダ、ダメだよ。俺仕事しなくちゃ…」
「じゃあ、終わったら遊ぼう!それまで俺待ってるね!ばいばーい、フジ!」
「えっ…待ってるってどこで…って、あっ!」
何時に終わるかも言ってないし、どこで待ってるかも分からないのにヒラは瞬間移動?ってやつで消えてしまった。
「ヒラって、自由奔放だな…」
凄く自然にヒラって名前呼びしてしまったことに驚いた。
「まっ、いっか。仕事しよっと」
俺は図書館の中に戻った。
一旦あの自由奔放なやつは忘れよう。
そして、俺は仕事に専念することにした。
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