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☆俺の恋物語【2】フジヒラ
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「やっと終わったー!」
今日も誰よりも遅く残って仕事をしていた。何故かいつも帰るのが最終になる。
こういう仕事は嫌いじゃない。だから、別に1人ぼっちになっていても構わなかった。嫌いじゃないって言っても疲れるっちゃ疲れるんだけど…
「明かりを消して…あっ、戸締りきちんとしなくちゃな」
鍵をかけて裏口から出た。
するとそこには…
「やっほ〜!フジ!お仕事終わった?」
ヒラが立っていた。
「また、お前か…疲れてるんだ、早く帰らせて」
「えー…でも遊ぶって約束したよ!!遊ぼうよー」
「だから、疲れてるんだって」
「あー、もうこんな時間かぁ。ねぇ、フジ。星は好き?」
「話聞いてる!?まぁ、好きだけど…何で?」
「そっか。じゃあ、俺に捕まって!」
「えっ!?」
「いいから、いいから。ほら、はーやーく!」
俺は抵抗はあったけど、ヒラの体に抱きついた。
「へへっ、しっかり捕まっててね!」
ぱちんっ!
ヒラが指を鳴らすと、急に目の前が眩しくなった。
気付くと俺たちは丘に居た。
灯台が少し遠くに建っていて、目の前は海。風に運ばれて塩の匂いが微かに鼻を擽った。耳を澄ませば波の音が聞こえる。
地面には一面ヒラの目の色のような草が生い茂っていて、その草の所々に俺の目の色のような小さな花がぽつぽつと生えていた。
そこは本当に美しかった。
「綺麗な所だね…」
俺は感動して、ぽそっと呟いた。
「そうでしょ?ここ俺のお気に入りなんだ!前は1人で来てたんだけど、今はフジが居るからね!」
「そう…なんだ」
(1人ってことは友達が居ないのか…?)
ほぼ初対面の人にこんなこと思うのは失礼かと思い、1人が好きなのかもと思い直すことにした。
「それにここの地面って何だか俺たちみたいじゃない?そこもお気に入りポイントなんだ〜。最近気付いたことなんだけどね!」
「ふっ…そっか」
同じことを考えていたので少し笑いがこみ上げた。
「ねぇ、フジ。上、見てご覧よ」
「えっ…あぁ…」
地面と周りの風景に気を取られて、空なんか見ていなかった。
俺は言われるがままに上を見上げた。
「うわぁ…!!」
そこには一面の星空だった。
街の明かりが届きにくいこの場所は星がよく見えた。真っ暗な空に白い星が点々と空を埋め尽くしていた。
(仕事に疲れて、空なんかあんまり見ていなかったけどこんなに綺麗だったなんて…)
「どう?フジ。元気でたかな…?」
下から俺を見上げる様に上目遣いをしながら俺の顔をヒラが覗き込んだ。
「うん!めっちゃ元気でた!ありがとう、ヒラ!」
「フジ!名前!呼んでくれたね!」
「あっ…そう言えば…」
「やっとフジが俺の名前呼んでくれたよ〜!やったね!フジも元気出たし、俺も超ハッピー!」
満面の笑みでこっちを見るもんだから、俺も次第に笑顔になってしまった。
「ここさ、ヒラのお気に入りって言ってたじゃん?他のやつは連れてきたことあんの?」
「ううん、ないんだー。フジが初めてだよ。俺ここに誰かとずっと来たかったんだ。ありがとう、フジ」
空を見上げながらヒラはありがとうと言った。
こちらこそ、連れてきてくれてありがとうなのにヒラは優しいやつなんだと思った。
それに加えて俺が一緒に来た初めての人かと思うと少し心が擽ったくなった。嬉しいような、そうではないような。この感情を表すには良い言葉が思い付かなかった。
「俺こそ、ありがとう」
とりあえずお礼を返して俺も空を見上げた。
ふと横を見ると夜は薄暗いはずなのに、ヒラだけが光り輝いている気がした。星明かりに照らされているのかもと思って見つめていた。
光りに照らされたヒラも星に負けず劣らず美しかった。
「フ、フジぃ…そんな見詰められると俺照れちゃうよ…/////」
ヒラの頬がほんのり顔が赤くなるのが分かった。
「あ、ごめん!/////なんか、綺麗だなって…」
「俺が!?」
「え…うん…あ、気持ち悪かったよね?ごめんね」
「いや、全然だよ!嬉しいんだけどびっくりしちゃってどう反応分からなかっただけ!ありがとう/////」
「いや、うん、本当のことだから、ね!ヒラ可愛い系だし!でも何か綺麗って言うか…あー、もう俺何言ってんだろ!」
「あははっ!フジ落ち着いて〜!俺気持ち悪いとも何とも思ってないよ〜。むしろ、褒めてくれてありがとうだよ!あ、でも可愛いって思われるのは心外だなー。俺カッコイイって思われたいのに!」
そうやって怒ってる顔も無意識に可愛いと思ってしまった。
(男相手になんてこと思ってんだろ…)
「いや、ヒラは可愛い系だからなー。でも俺の考えを変える出来事があれば見方が変わるかも?まぁ、頑張ってみな〜」
「あっ!バカにしたな!自分はカッコイイ系だからって人のことバカにしちゃいけないんだぞ!頑張るけど!」
「バカになんかしてないよー!ヒラこっち向いて!」
ふんっと頬を膨らませてそっぽを向いたヒラを宥めて、仲直りした。
「俺1日でこんなに初対面の人と仲良くなったの初めてなんだよね」
「えー!フジすぐ友達出来そうなのに〜」
「ヒラの人柄が良すぎるんだよ。癒し系だし、気さくだし。自由奔放なところも絡みやすいって言うか、なんて言うか…」
「ありがとう。フジだって最初怖そうなのに打ち解けるの早くてびっくりしちゃった!こんなに早いってことは俺たち気が合うってことだよね!」
にこっと笑顔を作ってこっちを見たヒラに謎の安心感を覚えた。
本当にこんなに早く打ち解けたのは初めてだ。ヒラと出会って合計まだ数時間だけど楽しいと感じていた。
「あー、もうこんな時間だ…帰らないと…」
「あっ、そっか。フジはお仕事あるもんね…残念だけどしょうがないか…」
しょぼんとして頭を垂れているヒラの少しふわふわの髪の毛をなでなでしてあげた。慰めているつもりで。
「わー!何なのもう!子供じゃないんだからね!」
「ごめんごめん。寂しいのかと思ってさ」
「寂しいっちゃ寂しいけど良いの!明日も会いに行くし!」
「明日も来るの!?」
「うん、行くよ〜。覚悟しててよね!」
「はいはい…分かりましたよ、待ってる」
「待ってて、ね。さぁ帰るよー!捕まって!」
最初感じていた抵抗感は無くなっていて、自然に抱きつくことが出来た。
ヒラがぱちんっと指を鳴らすと、また眩しい光に包まれて俺は元の図書館まで戻って来た。
「フジの家知らなくてここまでだけど…ごめんね?」
「いいよ、送り届けてくれてありがとう。また明日」
「うん、また明日ね!ばいばーい」
ぶんぶんと思い切り手を振って挨拶しているヒラを見て、俺も小さく手を振り返した。
それからいつもよりいい気分で家までの道を歩いて行った。
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