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湿ったバスタオルで身体を拭き、着替える。
「ヤマグチさん、ご飯ごめん。学校行くから行けないや。」
「おう、遅刻する前に早く行きな。」
短く告げられ、そのままヤマグチさんは風呂場へと消えた。
とうにぬるくなったであろう風呂に入り、この人はどんな事を考えるのかと思い立ち少し不安になる。
その思いはいらないものなのに。
「カギ、ちゃんとかけなよ。じゃあね。」
声をかけてゆっくり扉を開き、すっかり明るくなった空を見つめてエレベーターを待つ。
しんと冷えた廊下。エレベーター前の大きな窓からは、スーツや学生服に身を包んだ人々が見えた。
6階から見下ろすそれらは、まるで作られた映像のように現実を感じさせない姿で、皆駅へと吸い込まれてゆく。
古さ独特の香りに包まれながら、一度家に帰って着替えなくてはならない憂鬱を考えて目を伏せた。
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