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仲直り
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「いいか?普段みたいにきつい言葉を吐くなよ。多分それだけでリョウヤさんの人格は完全崩壊する」
大げさなコウスケの言葉に、しかし僕はいつもみたいに笑い飛ばすことはしなかった。
リョウヤの部屋のドアに僕たちは居るのだけれど、すでにもう帰りたくなってきた。
目に見えないはずの何かが隙間から鬱々とした嘆きを垂れ流している。
気のせいだと蹴散らしたいところだが、コウスケもそれを感じ取っているらしくいつにもまして眉間のしわが濃い。
「いくぞ。くれぐれも失敗するな。お前の手にリョウヤさんの命がかかっている」
ややオーバーな洗礼をされ、僕は部屋のドアを開けた。コウスケが後ろで敬礼でもしそうな雰囲気だ。
ぎぃっと重苦しい音を響かせてドアを押しのけた。
入った瞬間、帰りたくなったので猛烈な勢いで閉める。
部妙な空気のなか、ちらりと振り返るとコウスケの鬼の形相に見つめられしぶしぶまた中に戻る。
ソファに浅く腰かけ、机に肘をついて頭を押さえこんでいる何かは、僕が入ってきても微動だにしない。黒い髪の毛に爪を食いこませ、呪文のようにぶつぶつ何かを口ごもる。
これは本格的に病んでるな、と軽いぼくの気持ちはどこかへ飛んで行った。
こういうときはやさしい嘘は逆効果だ。厳しい本音をはきださなければ。
「リョウヤ」
「…」
「僕、リョウヤのこと嫌いとかいったけど、あれ本当だから」
びくりと肩が揺れた。
扉の外からコウスケの怒鳴る様子が思い浮かんだ。
「でもさ、リョウヤのしつこいところとか無神経なところとか嫌いだけど、本質的には嫌いじゃないよ。僕のこと守ってくれてるし、なんやかんやで僕の本気で嫌なことはしないしね」
「嫌いじゃ、なかったらなんなんだ」
「ん?…恥ずかしいから言わせないでくれる。察してよ僕のこと好きなら」
恥ずかしくなってきた。顔がちょっぴり赤いのがわかる。
俯いて悶えていると立ち上がる気配。何事かと顔をあげた瞬間、真っ黒な髪の毛が飛びついてきた。突然の反動に僕は耐え切れず衝撃のまま後ろに倒れこんだ。
「いてててて…なにすんだよもう」
「ユウ…ユウ…」
うなされた甘いリョウヤの囁きが直接鼓膜を震わすせいで、思わずぞくぞくきた。こいつ無駄にいいこえしてるな。
いつもなら問答無用で蹴り飛ばしてやるが、ここは我慢してやるかと寛大な心を見せてやろうかとした瞬間、別の意味で鳥肌がたった。
「はぁはぁ久しぶりのユウのにおい…すーはーすーは」
首筋に鼻を近づけて息を荒くするリョウヤに、無言で張り手を食らわせた。
なんだよ!心配したのにいつもどおりじゃねーかくそ!
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