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交渉開始
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「甘いなリョウヤ。いくら馬鹿だろうがこの程度の策略ならしのげるでしょうに」
くすくすと馬鹿にした笑みで歯噛みするリョウヤを青村はあざ笑う。
首に腕を回されて身動きができない僕は眼だけ青村をにらみつけた。
なぜかこいつにリョウヤを馬鹿にされたくない。自由ならそのムカつく顔面にこぶしをお見舞いしてやったというのに。
暴れてやろうかと犬歯をむき出しにすると、慌てたリョウヤの表情が視界に飛び込んできたのでやめる。
リョウヤのまなざしが暴れるなと物語っているように思えたからだ。なんでリョウヤの意図に気付けてなおかつそれに従ったのかは無意識下での行動である。
一瞬のうちに通じ合った僕たちに気づいていない青村は優位に立ったまま話し始めた。
「さて鈍感なリョウヤにもわかるよねこれから僕が言うこと?この美人を傷つけられたくなかったら僕のいう条件をのんでもらおうか?」
にまにまにまにまうざいなぁ!
そんでお前の吐息が首筋にかかってうひょってなったじゃないか!リョウヤにすごい睨まれたよ怖いよ!
青村が出した条件は信じがたいものだった。
一つ目はリョウヤのチームにいる人員をすべて青村にうつすこと。
二つ目はリョウヤがおさめていた陣地をすべて青村のものへとすること。
そして最後に、僕の身柄を青村に譲ること。
実質的にリョウヤがチームを捨て、彼についてきたメンバーすべてが青村のゲスに吸収される。ほとんどリョウヤのチームの消滅を意味していた。僕の身が危ないことも。
普通ならば飲むわけがない。常識人でありチームの頭としての責任があるものなら当然、僕みたいなオカマ男なんて気にせず首を振るだろう。
なのに、この馬鹿は眉間にしわを寄せたまま反応を示さない。
僕なんて気にしないで!と従来のヒロインなら叫びそうだが、そうされたくないので黙殺だ。きっと、あいつはそんなこと言っても何馬鹿なこと言ってんだと苦笑いするだろうが。
「さてどうする?このレディの頬に傷をつけたくないでしょう?」
僕の頬にナイフを当てる青村。ほっぺたに冷たい凶器を突き付けられおびえた僕に、リョウヤは一歩踏み出すが「こっちにくるな!」という青村の脅しで制止するしかない。
「さあさあ!早くしてください!待つのは嫌いなんでね」
「……最後のやつはどうしてもきけないんだが」
「ふん、女ならそこら辺にいるでしょうに」
「断ったらどうなる」
「その時はその時で貴方の大切な人が癒えぬ傷を負うだけですね」
「そうか」
青村の言葉にようやく覚悟を決めて顔をあげたリョウヤ。鋭い視線が青村ではなく、僕に突き刺さった。
ズボンのポケットからリョウヤは赤い鉢巻を取り出しゴミでも捨てるかのような気楽さで手を離した。ぽとりと落ちた赤鉢巻を茫然と眺める青村に、リョウヤはすっきりした面立ちで言い切る。
「ならお前にすべてくれる前に俺は引退する」
「は…はあ?」
思いがけない答えに青村が呻いた。僕は何とも言えぬ自分の感情に泣きそうになったのだった。
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