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プロローグ 桜の下で
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「ん・・」
裏庭の芝生に寝転がり、無防備な表情で一人の生徒が惰眠を貪っている。
ヒラリ、ヒラリ、
満開の桜から、薄紅色の花びらがヒラヒラと、明るい色の髪へ舞い落ちる。
お昼の穏やかな日差しの下、気持ち良さそうに寝入っている。
そこへ一つ影が落ち・・
「おい、立花、」
呼びかけに全く気づく気配もなく、のん気に寝息を立てている。
「・・スー・・」
「おい、・・起きろ、」
男の声色がだんだん低くなるが、気づかずに反対側へ寝返りをうつ。
「・・ぅん・・」
「おい・・」
「・・・」
「いつまで寝とんじゃコラァ!!クソガキが!」
「!!?、うっ、ぐはっ!・・・」
男の怒鳴り声にガバッと目を覚ました立花は、直後、腹部に走った痛みにうめき声を上げる。
「ぐうぅ・・キム・・」
「先生と呼べ。次呼んだらコロスぞ」
「・・暴力教師・・」
重い蹴りの入ったお腹をさすりながら、小さく呟く。
「ああっ?声張ったら足も勝手に動いちまって。ついっ、な。悪かったな」
悪びれもなく答える。
「ついっ、で蹴るな、重いんだよ・・」
まだ痛いらしく、お腹をおさえ顔をしかめながら身体を起こす。
「だから謝ってんだろ」
こっのヤクザがっ・・謝りゃいいのか!
心の中で悪態を吐き、せめてもの抵抗として睨む。
「あ?
もうとっくに授業始まってんぞ。こんなトコで寝てんな」
腕時計をコツコツと指す。
時計の針を見ると、昼休みはとうに終わっていた。
「キムは?授業行かねぇのかよ」
立花はダルそうに立ち上がり、身体に付いた草を払いのける。
「おい、」
ぐっと拳を握りしめたのを見、立花はしょうがなく言い直す。
「センセー・・」
手が下ろされ、立花はホッと胸をなで下ろす。
「オレこの時間授業入ってねぇんだ」
「ふーん、暇そー」
立花があくびを噛み殺しながら呟くと、キムは
後頭部をベシッと叩く。
「でぇっ」
「教師は授業以外にもやること山ほどあんだよ。
おまえらみたく暇じゃねぇ」
じゃあ、こんなトコ来てんなっ!
立花は心の中で思いっきりつっこんだ。
「お前この時間誰の授業だ?」
「さあ、誰だっけな〜」
だれの授業であれ、眠気を誘う。
最近、とにかく寝ても寝ても眠い。春だからか・・。
「いいから、はよ行け」
しっしっと追いやられ、立花はしぶしぶ廊下へ向かう。
すると、
「あ、立花」
呼び止められる。
(何だよ、お前が行けっつったんだろが)
振り向いた立花に少し近づき、目にかかる前髪に手をやり、一枚、花びらをそっとつかむ。
「あんま、無防備にしてんなよ」
「・・は?」
ハラリ、
そのまま立花の髪を耳にかきあげ、耳たぶに触れ・・
「いでっ!」
ぐっと耳を引っ張られる。
「ピアスいいかげん外せってんだろ」
「ででで・・!」
痛い痛い、このバカ力っ
「返事は?」
「・・ふぁいっ」
涙目になりながら応えると、ようやく手を離した。
「せめて一個にしとけ」
と言い、スタスタと中庭を出て行った。
「何だよ、いでぇ・・」
引っ張られジンジンしてる耳をさすりながら、一人呟く。
「・・暴力教師・・」
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