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定時になり、黙々とこなして本来の冴島の仕事にはようやく区切りが付いた。金塚が企画書の復元作業をしている間は自分の仕事をするしかない。そもそもはそれで問題ないが、今はそうではない。昨日の居酒屋でのやり取りを思い出す。あれは売り言葉に買い言葉であった。金塚を認めたくなくて、自分を過信した。その末路がこれなのだから、もう自嘲もない。とにかく今は金塚に頼るしかない。
それが如何に不本意であっても、だ。
「おら、ボーッとしてんじゃねぇ。次はもうねぇからな。」
金塚が冴島のパソコンにUSBを繋ぎ、マウスを勝手に操作してパソコンにデータを移動させる。
冴島は開かれたデータを見て感嘆の溜息を漏らした。ただ純粋に凄いと思ったのだ。この短時間で相当に完成度の高いものに仕上げられていた企画書。多分、最初に渡されたデータよりも出来上がりは良いはずだ。
「…マジかよ」
「前から思ってたけど、おまえ言葉遣いがなってねぇよな。」
「…すいません」
「次はねぇからな。ちゃんと明日までに仕上げとけよ。」
「はい」
こんな時ですら金塚は定時に帰る。いつも昼頃に出社する事を考えたら、今日は長く働いた方なんだろうが。
冴島は気合いを入れてキーボードを叩き始めた。これ以上金塚に借りを作るのはごめんだ。約束も無効。むしろ金塚の言う事を聞かねばならない。辞めさせられるとは思いたくないが、金塚がそれを賭けたのだから、可能性がないわけでもない。冴島の、金塚に対する今までの行いが良かったとは、冴島自身思っていない。
兎にも角にもこれを明日までには仕上げなければならない。その先金塚に何を言い渡される事になっても、請け負った以上はやらればならないという責任とプライドだけは冴島には人一倍あった。
結局この日、冴島は日付が変わる頃に家に着いた。それも仕事はお持ち帰りという二重苦を背負って、だ。
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