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金塚から一切無駄のない簡潔なメールが届いたのは昼過ぎだった。
昼食は鳴瀬に誘われて最上階の食堂へ行き、相も変わらずカツカレーを頼んだ。あまり辛くもなく旨味に欠けるカレーだが、カツが異常にジューシーで美味い。冴島は最早このカツ食べたさにカツカレーを食べている様なものだった。カツが美味しいカツカレーを頬張りながら鳴瀬に愚痴をこぼす。
「嫌味っすよねぇ。クライアントの前でもブレないっていうか…」
「でも寝坊は駄目だからなぁ。しかもよりにもよって企画会議の日に。その為に無理して仕上げたんじゃねぇの?」
「そうっすよ!なのに俺の馬鹿ぁぁぁぁ…」
悔しいし、やっちまったという気持ちはある。金塚が冷めた目で見て来た事も普段から比較的そうであれ、今回の件に関してはそれを責める権利は冴島にはない。
「でもクライアントの人、中森さんだっけ?怒られなかったんだろ?企画もすんなりOK出たらしいじゃん。」
「そうなんすよ。でもなんか今日の夜会食しようって話になった時はちょっと責められましたけど。」
「会食?」
「はい。夜ごはん食べに行こうって中森さんに誘われて、金塚さんと断ったんですけど俺たちはチームだとか言われて。でもなんだかんだと断ろうとしたけど、最終的に遅刻の事出してきて、さすがに断り切れないなって流れでしたよ。」
「ふぅん…」
「だから今日は定時に帰らなきゃなぁ。仕事終わるかな…」
「終わらせなきゃまずいだろ。それで会食まで遅刻なんてしたら洒落にならない。」
「…ですよね。呑気にご飯なんて食べてる場合じゃなかった。早く戻ろ」
「呑気っておまえ…俺も馬鹿にしてる?」
「まさか!じゃあお先です!」
残りを強引に口に詰め込んでトレイを返却口に置いてから足早にエレベーターに向かう。下に降りるボタンを押したが中々来ないエレベーターに苛立ってボタンを連打していると、結局すぐ追いついてきた鳴瀬に「やめなさい」と諭された。
ようやく来たエレベーターに乗り込みフロアのある階で止まる。そこからは競歩の勢いで自席を目指す。自分のデスクにあるパソコンをスリープモードから呼び起こしてメールを開いた。
受信は3件。
2件は訳のわからない保険会社からの広告で、もう1件が冒頭にもある無駄のない簡潔なメールだった。
差出人:金塚 紫
件名:会食
本文:18時
金閣楼
無駄がないと言うよりは、無さすぎるメールに冴島は「らしいな」と思って不覚にも笑った。
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