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中森と木部が部屋から出て来る時、冴島は慌てて部屋を飛び出した。「冴島くんは帰ったのかな?」「かも知れませんね。」という会話をしながら部屋を出て行く2人を廊下でやり過ごし、見えなくなった所でまた部屋に戻った。
開け放たれたままの襖。奥の部屋の窓際で外を見ながら煙草を吹かしている金塚の姿があった。シャツを羽織ってはいるが、前がはだけているので裸体が隠れてはいない。
「…金塚さん」
冴島が声を掛けると金塚は気だるそうに振り向いた。
「…なんだおまえ…帰ったんじゃないのか?」
中森らがそう言ってるのを聞いて、金塚はそうなんだと思っていた。
「いえ…先には帰れませんから」
冴島が言うと金塚は「ふんっ」と鼻で笑ってから「今更そんなことを気にするのか」と言った。
「これ…なんなんすか」
「何って…セックス以外にあんのかよ」
あけすけな物言いに冴島は苛立ちを覚えた。
「そんなの…!…いや、そうじゃなくて、なんでこんな事!」
「おまえには関係ねぇ」
「はぁ!?ふざけないで下さい!いきなりこんなもの見せられたこっちの身にもなって下さいよ!」
「誰も見てくれなんて変態みてぇな事言ってねぇよ。」
「でも隣でこんな事してたら誰だって…!」
「あー、あー、悪かったよ。もういいからさっさと帰れ。どうせ支払いは中森さんがやってくれてるよ。」
支払いが済んでるなら帰れるとか、そんな話ではない。冴島にはこの理解できない状況への少しの弁解が欲しかったのだ。
「金塚さん…いつもこんな事してるんすか?」
冴島は金塚のあの時の痴態を思い出す。乱れた吐息に甘い嬌声。中森にイクようにせがんだ言葉。あれらは中森を誘惑するものだった。
「いつもこんな事して仕事取って来てるんすか?」
冴島は否定して欲しかった。好きな先輩ではないが、仕事が出来るという意味では少なからずの尊敬が無かったわけでもない。だからそんな筈はないと、こんな事をして仕事を見つけてるわけじゃないと言って欲しかったのに、
金塚から返されたのは、
「だったらなんだよ。」
だった。
冴島の中に渦巻いて行く嫌悪感。
憎悪が体を満たした時、表情にもそれははっきりと出ていた。
「最悪だな。気持ち悪りぃ。」
気付けばそう吐き捨てて冴島は部屋を去っていた。
残された金塚はゆっくりと紫煙を燻らして呟いた。
「…はっ…これは本格的に嫌われたな…」
そう自嘲するしかなかったのだ。
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