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「金塚がどんな見た目の人間でも関係ねーよ。女っぽくても男くさくても、金塚は金塚だから。」
鳴瀬が真剣な眼差しで伝えると、金塚は目尻を赤く染めて「そっか」と言った。
綺麗だとかそんなことを言い出したのは鳴瀬の方なのに、外見なんて関係無いと言うのはおかしな事かもしれない。けど、どんな意味であろうとも鳴瀬にとって金塚は大切な人であり、それは彼の外見が必要以上に中性的で意図もなく人の目を惹いてしまうという事実は関係がない。
「あ、そうだ。明日さぁ、草野さんのクライアントと飲みに行くんだよ。」
「草野さんの?なんで?」
「いやぁ…まぁ、一応担当から外れたとはいえ初期から関わってたわけだからさ。ミスの件の謝罪も含めて?草野さんが参加しろって。」
「なんだそれ、だってミスは…」
「クライアントには関係無いからさ。うちがミスしたのには変わりねぇもん。」
「だけど」
「まぁ!良い話にはなんねぇだろうなとは思うからさ、明日飲みが終わったらおまえん家行って良い?」
「それは別にいいけど…」
「良かった。なら飲みも我慢出来るわ。その変わり愚痴聞いてもらうからな?」
「それで済むんならいくらでも。」
握り締めていた事も忘れていた手がスルリと離れて行く。それが鳴瀬には少し寂しかった。
今思えば間違いなく金塚に惹かれていたのに、その気持ちを受け入れるだけの器量もなければ勇気もなくて、ただ、この気持ちは同僚として、あるいは友人として大切に思っている…という事なのだと言い聞かせた。その気持ちも間違いでは無い。けど、言い聞かせている時点でそれとは別の感情があった事を認めているようなものだったのだ。
翌日の飲み会後に来るはずだった金塚から連絡はなく、心配した鳴瀬からの着信にも出ない。場が盛り上がっているだけならよかったが、あの草野がいるのにそうなるとは到底思えなかった。わざとミスを連発し、その責任を全て金塚に押し付けたあの草野だ。
「飲み会になんか行く必要はない」ともっと引き止めていたら、あの惨劇は起きなかったんじゃないかと鳴瀬は未だに後悔している。
あの悲劇が起きたのが、まさにその日の事だったからだ。
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