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顎に添えていた手を静かに払いのけると、金塚は「そういえばおまえ、冴島の教育係だったよな。」と脈絡のない話を持ち出した。二人の間に流れていた空気がその一言でガラリと変わる。
それはあの頃の気持ちを未だに持て余している鳴瀬への拒絶だったのかも知れない。
「あぁ。それがなんだ。」
名残惜しさを感じながら鳴瀬がそう言うと、金塚の綺麗な額に自然な弧を描く眉が寄った。
「あいつなんであんなに俺に突っかかってくるわけ?昼から出勤してんのが腹立つのは分かるけど、仮にも先輩だろ。どうなってんのおまえの教育。」
「あー…いや、でもそんな態度取るの金塚にだけだからなぁ。他にそんな問題児もいないけど、馬が合わない相手にもそれなりに合わせるタイプだよ。」
「なら俺にも合わせろよ。なんなの、俺にだけ。」
「金塚の言い方にも問題があるんじゃないか?」
「ろくに会話もしてなくたって最初からあの態度だったよ、あいつは。面倒くせぇ。」
「まぁそういうなよ。あれでも一応…昨日の事は反省してるみたいだからな。」
金塚の眉間のシワが更に深くなる。
「あれこそあいつが気にする事じゃねぇのに。そういうとこは無駄に気にすんのか。だったら普段からもっと敬えばいいのにな。」
「それは本人に直接言ってくれ。」
「言ったところで聞かねーだろ。」
「どうだかな。」
鳴瀬が苦笑を浮かべた時、遠くから鳴瀬を呼ぶ声がした。声の主は噂の男、冴島だ。
「鳴瀬さん!すいませんちょっと…あ…」
鳴瀬の影になって見えていなかった金塚を見つけて一瞬で苦い表情に変わった。
「な、これだよ。」
金塚がそう言うと片手を上げてその場を後にした。
「え、なんすか、これって。」
意味が分かるはずもない冴島の視線が、鳴瀬と金塚の間を何度も往復する。
鳴瀬は苦笑を浮かべながら「どっちもどっちなんだけどな」とぼやいた。
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