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金塚が渋々背中を向けてワイシャツを下ろした。すぐに着るつもりなのだろう、袖は抜かないままだった。
そういうのが良くないのだと、自覚はないのだろうか。
誘惑されている気が、してしまう。
「…背中、は大丈夫そうですね」
「だから言ったろ。」
そう言ってワイシャツを羽織りボタンをする。
あっさりと仕舞われて行く素肌に、名残惜しさを感じているのには見て見ぬ振りだ。
「…あの、晩飯どうします?腹空きませんか?」
「あぁ、でもコンビニでご飯は買ったから……」
そう言いながら金塚ははたと何かを思い出したように顔を上げた。
「あ!っあぁぁ……」
「え、どうしました?」
「忘れた!コンビニで買ったやつ、あのおっさんに絡まれた時に置いたまま忘れて来た!」
そう言われれば電車を降りてからこれまで金塚はコンビニ袋を提げていなかった。途中で立ち寄って何かを買っていたのは知ってるが、こんな事があってそんな事はすっかり忘れていた。
「あのおっさんめぇ…」
忘れ去っていたのは金塚だから逆恨みのようでもあるし、あの酔っ払いのせいでもある。でも、こんな事がなければ忘れなかっただろうと思うと、やはりあの酔っ払いが悪い。
「また買いに行きます?」
「もういいや、めんどくさい。なんかまた同じようなもの買うのも勿体ない気がするし」
「ですよね。じゃあうちで食ってきますか?」
「…なに、おまえ作れんの?」
「簡単なものなら。」
「ふぅん…何作んの?」
あれ、意外と乗り気だ。
冴島は金塚の意外な反応に驚いていたが、そんな素振りを見せると怒りそうなので隠しておいた。
服を正しつつも上着まで羽織らないあたりで、割と食べて行くつもりなのだと分かった。
「今の食材ならとりあえず鍋ですかね。もう腹減っちゃってるんであんまり時間がかかりそうなのはちょっと…」
「何鍋?」
「モツ鍋」
「食べる」
それは食い気味の決断だった。思いがけず金塚の好物にヒットしたらしい。冴島はつい笑いを吹き出してしまった。
笑われた事に少しむっとした表情を見せたので、帰るとか言い出すんじゃないかと思ったが、「早く作れよ」と催促されただけだった。
モツ鍋が余程好きなのだろうか。
それはそれでまた冴島を笑わせた。
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