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車が走り出すと、その性能の良さが想像以上だと金塚は興奮気味に驚いていたが、金塚の家の前に着いた時に驚いたのは冴島だった。
「ち、近いっすね、本当に。」
走り出して5分程の距離に金塚の住むマンションがあった。外見は色んなカラーのレンガ造りでおしゃれなマンションだ。新築並みに綺麗に見えるが、夜の暗さで多少誤魔化されているらしく、昼に見れば築10年の歴史が見えるらしい。
「だから言ったろ。歩いてもそんなかからないんだ。」
「はぁ」
「せっかくだから上がってくか?ソファー見たいんだろ?」
思いもよらない誘いに冴島の心が躍る。その誘いを喜んで受け、車は金塚の駐車スペースに止めた。金塚は車を所有していないのでそこに車が止まるのは初めてだ。
「おまえのマンション程セキュリティがしっかりしてないのが今は恐ろしいよ。」
「ははっ、大丈夫でしょ。」
「鍵だけはちゃんとかけろよ。」
「分かってますって。」
金塚に見守られて車に鍵をかけてマンションに入る。冴島のマンション程、入り口に防犯機能はないが、それが一般的な事は分かっている。だが、金塚の事を思うともう少しセキュリティの整ったマンションに住んだ方が良いのではと思った。
「こんな事いうのも変なんですけど、このマンションで大丈夫なんすか?」
「は?何が」
「いや、あっさり部屋の前までこれちゃうじゃないですか。ストーカーとかに後つけられたらバレちゃいますよ。」
「そんなもの後をつけなくたってポストを見れば部屋は分かるだろ。」
「そうじゃなくて、分かったとしても簡単に侵入出来ちゃうでしょって事ですよ。」
「やった事はないから分からん。」
「いやだからそうじゃなくて…今までなかったんですか?ストーカーとかちょっとした被害とかは。」
金塚は少し思案した後に、「ないと言えば嘘になるな」と事も投げに言った。その感覚が冴島には信じられなくて溜息が出る。
「俺の車の事はやたらと気にするのに、なんで自分の身の事はそんなに無頓着なんですか。」
「無頓着なわけじゃないが、気にしてもしょうがない事もあるだろ。そうなった時に考えようって事だよ。」
「そうなった時には手遅れなんですよ!」
「でかい声を出すな。近所迷惑だろ。」
まだマンションの廊下を歩いているところだから、大きな声を出せば声が響く。神経質な人がいればすぐにでもクレームになるのだ。
ある部屋の前で金塚が立ち止まり、鞄から鍵を取り出して解錠するとドアノブを回した。
扉の先は真っ暗でよく見えないが、ほんのりと嗅ぎ慣れた香りが冴島の鼻腔を刺激した。
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