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朝になって携帯のアラームが部屋に鳴り響いていた。あれから金塚の寝息を聞いていたらすぐに冴島も眠くなって、体を寄せ合って眠った。
冴島も久しぶりに人の温もりを感じながら眠って、心まで温かくなる心地だった。
アラームを止めようとテーブルにある携帯に手を伸ばすが、絶妙に距離があって届かない。
片腕は未だに金塚を抱きしめていて、麻痺するほどに痺れてしまっているし、金塚を起こしたくもない。だが、このままアラームを放っておいてもいずれ起きてしまうだろうし、一か八かで金塚をそっとソファーに寝かせる。
小さな呻きを漏らしたが、覚醒する事なく眠りの世界にいるようで、ほっと冴島も息を漏らす。
「…はぁ、帰るか。」
朝の時間的には余裕がある時間にアラームをセットしたので、今から帰って準備をしても十分間に合う。
金塚はいつも通り昼から出社するだろうから、無闇に起こさないでこのまま寝かせておくことにした。風邪を引かないように、もう遅いかも知れないが寝室から毛布を持ってきてかけてやる。
すやすやと子どものようにあどけなく眠る美丈夫の髪を、そっと一撫でして冴島は部屋を後にした。
車で帰ってからはいつも通りの準備をして、少し早めに家を出た。金塚があんなに興奮気味に車の事を言うもんだから、これからは車で通勤しようかとも考えたが、どうしても交通量が多いと腰が引ける。時間もそれなりにかかるし、日によって交通量がバラバラな所も面倒だ。でも、帰りに金塚を乗せて帰ったら喜ぶかな…と考えると、それも悪くないとは思う。
結局今日はそのまま電車で通勤すると決めて、冴島は駅へと向かった。
電車に揺られて会社にたどり着いた頃には、いつもの日常を取り戻していて、金塚との出来事は夢幻だったと思える。
いつもの様に営業部のフロアに辿り着いて、すれ違う人に挨拶をして自分のデスクに着く。昨日、金塚に教えてもらいながら進めた企画書に、さらに修正を加えて、先方に連絡を取るのが今日の仕事だ。
「おはよう、昨日金塚と残業してたんだって?」
声の方を振り返ると鳴瀬が立っていた。
「あ、おはようございます。そうなんすよ。金塚さんの仕事をやってるから俺に任せっきりじゃ不安だったんだと思いますけど、ちゃんと分からないところとか間違ってるところは指摘してくれて。」
「珍しいな。あいつがそんな事。」
「俺が信用できなかっただけだと思いますけどね。その後一緒に帰ったんですけど、偶然にも家がめちゃくちゃ近くて。色々あって泊めてもらったりして、金塚さんの事、本当に見方が変わったっていうか、自分が今まで間違ってたんだって気付けて良かったって思ってます。」
「…そうか。まぁ…頑張れ」
鳴瀬が冴島の肩を励ましの意味で叩いた。
冴島がそれに「ありがとうございます」と応えたが、鳴瀬は浮かない表情でその場を後にする。
何かを考えているようなそれを、冴島は不思議に思ったが、それ以上を特に気に留める事なく仕事を再開させた。
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