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胸を押す手を取り、指を絡ませる。
そのまま腰を支えて金塚をソファーに押し倒した。
「んっ…ふ…っ」
鼻から苦しそうな息が漏れて、それに乗って囁くみたいな声が鳴る。
むしゃくしゃする。
これをあのジジイ共が無遠慮に聞き、この人の心を踏みにじった事を思うと、無性に腹が立つ。
「ふ…はぁ…あの…聞いてもいいっすか…」
乱れる息を吐きながら、冴島は気になっている事を聞く。
「…ん…なに」
「あの人らとも…キスしたんすか…?」
聞かなきゃいい事だと分かっている。けど、聞かないまま、気にしないでいられるわけでもない。
付き合っているわけでもない。なのに、好きな相手の嫌になるかも知れない事をわざわざ聞いてしまうのは、それだけ真剣だという事。
本気だからこそ、相手のことは知りたい。
「…したって言ったら、どうだってんだ」
「別に…俺がもっと腹を立てるだけです。」
「腹、立ってるんだ」
なぜか少し嬉しそうに金塚が言う。
「えぇ、まぁ。そういうのは心狭いんで、過去の女とか男とかにも嫉妬しますよ。」
「…ふぅん…」
「でも、じゃあしてないっすね」
「…なんで」
「あの時、同じような質問したら「だったらなんだ」って金塚さんが言ったんですよ。」
どの時の事かと金塚は首を傾げる。
「あの人らにやられた後に、いつもこんな事してんすかって俺が聞いたらそう言ったんです。してないって言ってくれればいいのに、そういう時には本当の事言ってくれない。言い訳してくれたら、俺もあんな風に金塚さんを傷付けなかった。傷付けたく、なかった。」
冴島はそう言いながら泣きそうになった。傷付いたのは金塚なのに。
傷付けたのは、俺なのに。
「別に傷付いてなんかない。そういう事をして向こうの機嫌取りをしたのも事実だし、気持ち悪いと俺も思う。」
「それ!…そうやって自分を下等評価するのはやめて下さい…気持ち悪くなんかない、金塚さんは綺麗だ。本当に。…してないんでしょ?」
もう一度確認する様に冴島が言うと、金塚は視線を逸らして「…してない」と呟いた。
分かってはいたが、それでも金塚の口から聞けた事が冴島には嬉しかった。
「…もう一回していい?」
「…やだ」
「…それ、無理じゃね?」
「や…っぁ…んぅ…」
抵抗の声を上げる口を塞ぐ。さっきよりも甘くはないはずの唇が、なぜか酔いそうになる程に甘ったるい。
味ではない、気持ちなんだ。
冴島はそう思うと、優しい気持ちになれた。
愛おしく、儚いもの。
この人を守りたい。
全てを知りたい。
自分のものにしたい。
誰にも触れさせたくない。
俺を好きだと言って欲しい。
小さく震える体でキスを受け入れている金塚は今、
何を思っているのだろう。
まだ、冴島には金塚の気持ちが見えていなかった。
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