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「金塚さんって何か嫌いな食べ物ありました?」
夜食用にと買い込んでは来たが、金塚の好き嫌いを聞いて買ったわけではない。作ってから食べられないと言われると困るので聞いてみると、しばらく逡巡した後に「苦い系」と答えた。
「…ざっくり。もっとピンポイントで来ると思った。ピーマンとか納豆とか。」
「納豆は好きだけどピーマンは苦手。食べれなくはないけど。ゴーヤは無理。」
「苦い系って本当の苦いやつの話っすね。ゴーヤは好き嫌い少ない人でも苦手な人いますよ。美味いんですけどねぇ、ゴーヤチャンプル。」
「当たり外れがあるだろ。初めてゴーヤ食べた時にめちゃくちゃ苦いの食わされてさ、それから食えないんだよな。」
その頃の苦い思い出を思い出し、それこそ苦い顔をする金塚を冴島は笑った。
「よっぽど苦かったんすね。」
「笑い事じゃないっつうの。見事なトラウマだわ」
「誰に食わされたんすか?」
「従兄弟。沖縄土産だって言って買ってきたゴーヤで作ったのを食わされた。」
「金塚さんの従兄弟か。似てる?」
「似てないな。アイツは厳ついからな。男臭いっていうのか豪快っていうのか、親戚の集まりで顔を合わせれば絡まれて煩かった記憶しかない。」
「へぇ、なんかイメージつかないなぁ。」
正反対とはいわなくても、金塚にはそれらしい要素が見当たらないのでなかなか難しい。冴島の従兄弟は皆なんとなく似ているので尚更だ。
「そういえば兄弟とかは?いないんですか?」
「いるよ。年の離れた妹が1人。今年の春から高校生だったはず。」
「へぇ!意外!やっぱり妹には甘いんすか?」
「やっぱりってなんだよ。甘くもないし。母親みたいな事言って来るから怖いけどな。」
「母親?」
「そう。ちゃんとご飯食べてるの?とか、1人で生活出来てるの?とか。おまえは俺の母親かって言いたくなるわ。」
それはたしかにそう言いたくもなるが、妹の気持ちが分からなくもない。特にご飯に関しては冴島も無頓着だと分かっているだけ余計にだ。その片鱗は妹や家族と過ごしていた時からあったのだろう。妹が母親のように心配するのは頷けるし、それだけ兄を好きなのだろうと思うと微笑ましくもある。
「おまえは?兄弟とかいないのか?」
成り行き上当然の質問に、冴島はため息をつきながら「残念ながら一人っ子なんすよね。」と答えると、なぜかすぐに「だろうな」と返ってきたことに関しては納得出来なかった。
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