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鳴瀬が珍しいなんて言うから、冴島は少しだけ舞い上がっていた。
自分は特別。そんな気がした。
だけど、金塚は「偶然だろ。」と軽く流していて、それが照れ隠しとか誤魔化したいからだったら良かったけれど、金塚の様子からはそう見えない。
「じゃあ今度は俺も遊びに行かせてくれよ。」
軽い調子で鳴瀬が言うと、金塚も「時間が合えばな」とあっさり了承した。冴島が舞い上がっていた事などきっと知りもしないのだ。
「でも金塚さん料理出来ないから遊びに行っても何も出てこないっすよ。」
そう言えば鳴瀬が「じゃあ行かない」と言うわけでもないのに、それでも諦めてくれないかな、という淡い期待があった。日に日に増して行く独占欲と不安感。自分だけが特別だと思えたなら、こんなに心の中が乱されることは無いと分かっている。
金塚はまだ、誰のものでも無い。
それが救いでもあり、冴島をより一層焦らせる事でもあった。
「そういうところは相変わらずなんだな。」
そう言って過去を懐かしむみたいに優しい顔をする鳴瀬を、冴島は見れなかった。
「うるさいなぁ。いいんだよ、冴島が作れるんだから。な?」
金塚が同意を求めて視線を冴島に送る。その目にはなんの淀みもない。
「え、俺も行くんすか?」
「当たり前だろ。この流れでなんで居ないと思うの?」
それは、鳴瀬と金塚だけの約束だから。
でも、金塚は冴島がいる事を「当たり前」と言った。
嬉しい。それだけで、凄く。
この短い時間の中で、どれだけ落胆と歓喜を繰り返しただろう。
こんなに相手の言葉の一つ一つに心を寄せた事などない。
好きという事がどういうものなのか。
今初めて思い知らされている。
好きだ。
好きだ。
…抱きしめたい
また、キスをしたい
そこまでしておいて、恋人ではないのが不思議だが、冴島の気持ちはもうそこにしか向いていない。
金塚を自分のものにしたい。
でも、金塚はきっと、違うのだ…
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