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今までずっと思って来たわけではない。むしろ、そういう視点で金塚と鳴瀬の関係を見た事などなかった。
だけど、冴島が金塚を好きになって、見えて来るものが変わった。
それに気付く前から鳴瀬は金塚をよく気に掛けていたのだが、それは同期だからだというのと、鳴瀬が社交的で世話好きだからだろうと思っていた。
だけどそうじゃないのだと気付いた。
鳴瀬はやたらと金塚に触れる。
なんで今まで気づかなかったのかと思うくらいに。
「…あんな事がなかったら、俺たちはきっと上手くいってた。」
鳴瀬はそう呟いた。
「それは、金塚さんも鳴瀬さんの事を…?」
冴島が聞くと鳴瀬は苦笑を浮かべて「多分な」と答えた。
金塚さんが鳴瀬さんを好きだった?
「あの、一応聞くんですけど、金塚さんも鳴瀬さんも同性愛者ではないですよね…?」
「違うけど、おまえもそうだろ。金塚は前にバイセクシャルっぽいとは言ってたけどな。」
「そうなんすか」
「基本的には異性だけど、中には同性でもいける時もあるって。他の人に比べて同性に対するハードルは低いと思うって言ってたな。だからってそんな理由で俺はあいつを好きになったわけじゃないけど、なんせあの外見だろ。それに中身も昔は可愛らしかったからな。他の人よりも一緒にいる時間が長かったのもあって、好きにならないわけがなかったよ。」
鳴瀬は想い合っていた頃を思い出して、懐かしむ様に空を見つめて目を細めた。
冴島には鳴瀬の気持ちが理解出来る。本当の金塚を知れば知るほど、仕事が出来るのに自分の事は疎かで、
料理が出来なくてなんでか生活力がなくて、それでも人に頼るのが好きじゃなくて下手くそな彼だと知ってしまったら、守ってあげたくなってしまう。意外と不器用なところが可愛いと思ってしまう。
そんな所は自分以外に見せたくないなと思った時には、金塚に心を奪われてしまっているのだ。
「鳴瀬さんの気持ち、わかりますよ。でも、あの事がなかったら上手くいってたっていうのは違うと思います。だって、俺だったらどんな事があっても諦めたりしないっすもん。」
「…おまえには分からないよ。あの時の金塚がどんだけ大変だったか。そこに恋愛をする余裕があったと思うか?」
「だったら余計、側にいて支えてあげた方がいいでしょ。そこに恋愛を持ち込むわけじゃないけど、好きな人が辛い時にはどんな形でも側にいてあげたいと俺は思いますよ。」
「あいつがそれを嫌がったんだ。側に誰かがいる事をストレスだと感じてた。」
鳴瀬はそう言うが、冴島は多分それは違うと思った。
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