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気付けば朝になっていて、抱き締められていたはずなのに、そこには何もなく空っぽだった。あったはずの場所を無意識になぞる。
まだ少し、暖かい。
おもむろに起き上がってリビングに向かうと、キッチンに冴島の姿があった。
「朝ご飯作ってるのか」
「あ、おはようございます」
「おはよう。」
「朝ご飯は1日を乗り切るために大事なものですからね。」
「その為に早起きしたのか?」
「んー、作ろうとは思ってましたけど、早起きはするつもりじゃなかったですね。」
「ん?うん」
結局早起きしたのかしてないのかよく分からない返答だったが、金塚が頷いてみたら冴島は「分かってないっすよね」と言って笑った。
「俺だって好きな男が隣に寝てたら、ときめきが止まんない事もあるんすよ。」
ときめきってなんだ。
ずいぶんと乙女チックな表現で、かつ、どうにも古めかしい言い方に金塚は吹き出して笑った。
「おまえ…っ、そんなナリでときめきって…!」
金塚が腹を抱えて笑うと、冴島はあからさまに不服な顔をした。
「なんすか。いいじゃないですか。事実なんだし。大体寝てる時のあんたが可愛いのがいけないんじゃないですか。甘えるみたいにすり寄ってきたり、抱きついてきたりしたんですよ。その度に邪な事を考えてはその意識を振り払うのに必死だったんですよ。悪いですか。」
「くはっ…悪くはないけどさ…っ、てか、抱きついたって何。嘘はやめて下さい。」
「嘘じゃありません。こう、腹のところに手を回してギュッとやられたんです。」
冴島は金塚の手を引いて自分の腰のあたりに巻き付ける。グイッと引かれた金塚は唐突なそれによろめいて、冴島の胸に顔をぶつけた。
「痛っ…ちょ、何すんの」
「やれば思い出してくれるかと思って。意識はなくても体が覚えてるって事もあるでしょ。」
「ねぇわ。そんな事より早くご飯作って。」
金塚は冴島の手を振りほどいて、顔を洗いに洗面所へと姿を消した。
その顔が少し赤く染まっていたことは、冴島は知らなかった。
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