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それから一ヶ月が過ぎて、冴島は日を追うごとに金塚の家に入り浸る事が多くなった。最初は仕事を抱えてくる事が多かったが、一ヶ月も過ぎれば冴島に引き渡した仕事も完了しているものが多く、今はそれぞれがクライアントから取ってきた仕事に戻っていた。その事で相談をされる事はあっても、金塚の家に居る間は滅多に仕事の話をしなかった。
今日は土曜日で明日の日曜日は2人とも休みが取れる。それを冴島は数日前から何度も金塚に確認してきた。そして絶対に約束を入れないでくれ、とも。
「なぁ」
風呂上がりの金塚がタオルで頭を拭きながら、いつも通りキッチンに立つ冴島に声をかけた。
今日はカレーのようだ。
あの香ばしい香辛料の香りが漂っている。
「なんすか?」
「明日なんかあるのか?」
約束を入れるなとは言われてきたが、何をするとも聞いていない。
「あぁ、明日天気が良かったら水族館に行きませんか?」
「水族館?…いいけど、男2人で行くとこか?」
「今回のクライアントがそこの水族館の系列なんです。広告依頼は水族館と関係ないんですけど、新しくリニューアルオープンしたから是非ってチケット頂いたんですよ。」
そう言って金塚にチケットを手渡した。
「へぇ。でも勿体ないだろ。他に誰か誘った方が良かったんじゃないのか?」
「他の誰かじゃなくて、俺は金塚さんと行きたいんです。ダメですか?」
「ダメじゃないけど…他にもっと喜ぶ人がいると思うけどな」
「金塚さんは喜んでくれないの?俺と出掛けるの、嬉しくない?」
「嬉しくないわけじゃないが…」
純粋に、俺でいいのか?と金塚は思う。女性や若い子みたいに泳ぐ魚を見てはしゃぐ事はない。見るからに嬉しそうにしているところを見たいんじゃないのかと、金塚は思っている。ただ、数日前から休みを空けておくように言われていて、行きたくないと言うつもりもない。だから一応確認したかっただけだ。
「金塚さんが行きたくないなら行かなくてもいいんすよ。別にそこに行きたいってわけじゃないから、他のところに行っても、家でゴロゴロしてても、一緒に居られれば俺は構わないんで。」
「行くよ。行きたくないとは思ってない。こういうところに行くのも嫌いじゃないから。ただ、最近は俺とばっかり居るから、他との付き合いは大丈夫なのかと思っただけだ。」
「平気です。たまに連絡は取ってるし、金塚さんと会えない日には遊びにも行ってますから。一緒に居られる時間は出来るだけ金塚さんと居たいんです。」
困ったように笑う冴島に、金塚も小さく笑った。
「これ以上一緒にいるとそのうち一緒に住んでるかもしれないな。」
「…あー、俺はそれでも構いませんけど。」
「冗談だよ。明日、何時に行くんだ?」
「10時くらいに出ようかと。ついでに昼ごはんもあっちで食べたいし。」
「いいな。りょーかい。じゃあとりあえず早くカレーをくれ。」
「あ、はい」
金塚はチケットをローテーブルにおいてから、キッチンテーブルに座った。
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