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金塚と両想いだと確認し合い、恋人として付き合いを始めて数週間が経った。
その事に浮かれていたのは冴島だけではなく、金塚も同じだったと思う。
が、冴島が思い描いていた二人の関係とは少し違った生活が続いた。
「なんでまだダメなんすか。」
相変わらず冴島が金塚の家に出向いて夕食を作っている。
今日は焼き魚を中心とした和食で、これといって手の込んだものは作っていないが、金塚はそれを満足気に頬張っている。
ただ、金塚の前に座る冴島の表情は、料理の味とは対照的に不満そのものだ。
「別に今までのままで困ってないだろう。わざわざ引っ越して来なくてもいいじゃないか。」
正式に付き合いを始めてから、もう何度も同棲したいと金塚に打診しているが、一向にその許可が下りない。
晩御飯を作りに来て、次の日が休みの時はそのまま泊まっていく事が当たり前になっている。
半同棲と言っても過言ではないこの状況で、何故かいまだに金塚は同棲を認めてくれなかった。
「出来れば毎日夜は一緒に眠りたいって俺は思うんですけど、金塚さんはそうじゃないんすか。」
「…週末は一緒に居るんだから…」
「それだけじゃ足りないのって俺だけなんすか?これなら付き合う前の方がよっぽど一緒に寝てましたよ。」
どういうわけか、付き合う前はほぼ毎回、夕食を作った日にはベッドを共にしていたのに、付き合った後の方がその回数は断トツで減っている。ベッドを共にしていると言っても、付き合う前からセックスをしていたわけではないが、それでも共に眠れる事は幸せだった。
「付き合う前は別におまえが堕落しても俺のせいじゃないって思えたけど、付き合いだしたらそうはいかないだろ。俺と付き合ったせいでおまえが堕落したなんて言われたら、俺にも責任はあるんだし。」
「堕落なんてしてないでしょう。」
「今はしてないけど、一緒に暮らす様になったら絶対そうなる。」
「なんでですか。」
「だって……」
何やら言い辛そうに金塚が冴島を上目づかいで覗き見た。
訳が分からず、ただその仕草を可愛いなとだけ思った冴島は、「教えてくんなきゃわかんないっすよ。」と言った。
「だってさ…おまえ、ねちっこいんだもん…」
金塚は目を伏せてそう呟いた。
その顔が少し赤くなっているのが覗き見える。
一瞬何の事を言っているのかわからなかったが、金塚の表情でその意味を汲み取った。
と、同時に、冴島の方も少し恥ずかしくなる。
「ねちっこいって!」
「だって本当の事だろう!なんかおまえ、凄いしつこいし、何回もするし、言葉で責め立てるし…!」
正直そんな事を毎日の様にやられた身が持たないのだと金塚は訴えた。
「それと俺の堕落と何が関係あるんすか。」
「そんな事を毎日やってみろ。仕事に集中できなくなるに決まってる。」
「仕事はちゃんとやりますよ。夜もやる事はやりますけど!」
冴島の言葉に信憑性が持てない金塚は、じっとりと疑いの目を向けた。
「…やる事はやるんだ…」
「やらないっていう選択肢ないでしょ。」
「あるよ…もう辛いの…体が!」
付き合い出してから隙あらば求めてくる冴島に、金塚は怯えに近いものを抱いていた。
求められる事自体が嬉しくない事はないが、受け入れる側の立場として経験があっても慣れているわけではないし、やはり体への負担は大きかった。そして何より冴島がねちっこいのが悪い。
「じゃあどうしたらいいんすか。」
「…一緒に住みたいっていうなら、ベッドは別。」
「そんな…一緒に住む意味が…!」
「おまえ何気にひどいこと言うな。セックス以外に俺といる意味がないのか。」
「そういう事じゃないですけど!でもっ!」
「確かにおまえは若いもんな。やりたい盛りなのは分かるけど、少しは俺の事も考えろ。」
「じゃあ…じゃあ、ベッドは一緒で別の方法を!」
「なんで妥協しないだおまえは!」
「だって一緒に寝たいですもん!やっと付き合えるようになったのにそんな仕打ちはない!」
「うるさい奴だな…じゃあ、寝るのはいいが、セックスは週3回が限度だ。それ以上はやらない。」
「うえぇぇ…」
「文句あるならセックスもしないしベッドも別にする。」
「分かりました。セックスは週3回なら一緒に住んでもいいんですね?」
「……あぁ」
渋々だが、惚れた弱みとも言うべきか。
なんだかんだと言いながら、最後まで逃れる事は出来ないし、それで嫌気が差して捨てられるという恐怖も金塚にはないわけではない。
「あ、でもおまえ、来週から出張入ってるだろ。」
「え、知らないですけど。」
「そんな筈はない。高崎部長がおまえと一緒に関西支部に視察に行くって言ってたぞ。」
しばしの逡巡の後にそういうメールが来ていた事を思い出した。
それが来たのは一週間は前の事で、行けるか行けないかの返事を保留にしたまま忘れていた。
「あぁ!返事返してなかったんすけど!」
「ほら…堕落してるじゃないか。」
「ち、違いますよ!そういうんじゃなくて!だってその出張、2週間は帰ってこないんですよ!?そんなに金塚さんと離れるのは嫌だし、一応相談しようと思って…!」
「行く以外に返答なんかあるか。家庭の事情や病気でもない限り断らないのが社会人だぞ。それに高崎部長はもう行く気満々だったからな。今からいけませんって言ったって他に誰が行くんだ。」
「そ、そうですけど…」
「そのためにおまえの仕事に支障が出ないように部長が調整してくれてんのに。」
「断れ…ないですよね…」
「当たり前だろ。という事で、引っ越しももうしばらく保留だな。」
「喜んでませんか、金塚さん!」
「まさかー」
会えない寂しさは残るものの、最近の冴島の欲求からしばし解放されることには、金塚はほっとしないではいられなかった。
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