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良い教訓
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「監督、前に先輩と打った時、
辛勝でやっと勝てたって言ってました」
それは苛立つ先輩を宥めるつもりの何気ない言葉だった。
だけど、途端みるみる表情が変わっていく
先輩を見て俺は決して口にしてはいけない
一言だったのだと気が付いた。
「――辛勝だと?
中押しで負けそうになってたのを
アイツはわざと悪手を打って俺の石を生かしやがった。
格の違いを嫌というほど見せつけられた
あの一局をアイツはそう言ったのか!?」
「……や、あの」
「随分舐められたもんだぜ、クソッ!!
岩倉、それ以上聞きたきゃ本人に直接聞け!
二度と俺にその話は振るな、分かったか!?」
白刀田先輩は近くにあった
自販機を蹴り、ガゴンッと鈍い音と共に
くっきり跡が残った無残な姿に俺は心の中で
ひぃぃぃぃと悲鳴をあげた。
「ハ、ハイっ」
次聞いたら殺すぞと言わんばかりに
睨まれ先輩は足早に行ってしまった。
冗談抜きに以前の先輩なら迷わず言葉に出して
半分実行に移していたかもしれない。
そう思うだけでゾクっと身震いした。
……洒落にならない。
この世の中には迂闊に声をかけてはいけない人も
いるのだと知る良い機会になった。
(こ、怖かった……)
あの手の類の性格系には某幼馴染のお陰で
慣れていると思っていたのに、やっぱ全然違う。
監督と先輩、一体どんな雰囲気で打っているのやら。
「…………ダメだ、全く想像付かない」
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