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『捜さないで下さい』
そんな古風な書き置きを残して出ていったのは同棲中のオス。
21才、大学生。
朝9時から日付の変わる寸前の時間まで仕事で拘束されて、やっと帰って来れたと思ったらこの仕打ち。
正直、ふざけんなと言いたい。
社会人をなめるなよ、と。
ヤツが出ていった原因は、だいたい分かってる。
今年就職したばかりの俺は慣れない仕事と環境にテンパってて。
かまってもらえなくて寂しいから家出した…なんて言葉にすれば可愛らしいけど。
俺としては、こんな時くらい優しく支えてくれよって思う。
「めんどくせー……。」
そう声に出してみても、俺の手はさっきテーブルの上に置いたケータイを掴んでいて。
タップした番号に応えたのは無機質な機械の音声。
電波が入らない所にいるか電源が入ってない…って、きっとこれは充電切れたんだなって思う。
さっき脱いだばかりの靴を履いて、さっき鍵を締めた玄関から外に出る。
出て行ったあいつが行く場所なんて、たった一つしか思いつかない。
アパートの前の道からタクシーを拾って行き先を告げる。
窓の外に流れていく景色を眺めながら、ああ何やってるんだろうと思う。
7時間後には起きて仕事に行く準備をしなきゃいけないのに。
もうホントに疲れてるのに。
それなのに……、それでも。
放ってはおけない存在。
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