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「なんで引っ張ってったんだよ。あれで女子の恨みなんか買えば、てめーのせいだからな」
「またまたぁ。俺がどんなことしても、君は元から色んな人の恨み買ってるでしょ」
「恨みを買った覚えはない。向こうが勝手に突っかかってくるだけだ」
てか、何でこいつはこんなこと知ってんだよ。
何でか俺は買いたくない恨みをいくつも買っている、らしい。
一つ一つの恨みの理由なんて馬鹿みたいなものだ。
私の付き合っていた人が、あなたに乗り換えただとか、彼女がお前との浮気を疑ってくるだとか。
何でそれを俺に言って、巻き込まれるのか。
てめーらの事なんざ知ったこっちゃねーっつーんだよ、俺を巻き込むな。
と、内心で悪態をつきながら、売られた喧嘩は買う質なので、喜んで買う。
相手も俺のことをナメきってるのか何なのか、最初強気に出てくるが、生憎発情期なんかの時期じゃなければ、俺はそれなりに喧嘩だって強い…かは分かんねーけど、弱くはない。
女子相手にだって平気で手は出すし、幼い頃から口が悪いと言われてきて、オメガだと発覚してから余計に磨かれた口の悪さを発揮しまくる。
それなりに喧嘩は勝ちを収める。
普通なら言いふらされそうだけど、相手も負けたことを隠したいので周りには言わないし、俺も正直どうでもいいし自分からは周りになんか言わない。
それを何でこいつは知ってるんだ。
俺なんか、まだ名前を覚えたのと、とにかく性格がうざそう…っていうか、うざいことしか知らねーのに。
不思議に思い、また軽く睨むと、ん?と首を傾げ、笑顔を向けられる。
てめーのその胡散臭い笑顔は見飽きたっつーの。
玖村に手を引かれ連れてこられたのは、不良たちの溜まり場となっていた、廃部済みの部室だった。
なんの部活の部屋だったのかは、昔からいる教師しか知らないだろう。
不良たちの溜まり場になっていたことから、誰もそこには寄り付かなくなったらしいが、こいつは平気で部屋の中にあるソファに腰掛ける。
ちなみに、中には不良の1人もいない。
何者なんだ、こいつは。
「座りなよ、ご飯食べながら話そ?俺達の将来について」
「意味分かんねーし」
けど他に座る場所もないので、仕方なく玖村の隣に腰を下ろす。
持ってきたはいいけど、散々走り回ったので中身がぐちゃぐちゃになった弁当箱を取り出し、空腹を勢いよく満たす。
それを横目に見た玖村が、キラキラとした目を俺に向けてくる。
「美味しそうだね、自分で作ったの?」
「あ?…他に誰が作るんだよ」
当てられたことを少し悔しく思いながら、隠すことでもないので、素直に答える。
すると、余計目を輝かせて、眩しい笑顔で俺を見る。
「すごいね、こんなに美味しそうなお弁当、初めて見るよ」
「そ、れは…大袈裟すぎだろ。誰かさんのせいで中身もぐちゃぐちゃだし」
嫌味を混じえながら答える。
少し笑いそうになったが、それが悔しくて、必死に無表情に戻す。
そんな俺なんかお構いなしに、嫌味も聞こえいないのかと疑うほどにスルーし、玖村は続ける。
「ううん、本当に。ねっ、良ければ俺の分も作ってくれない?」
「はぁ?」
「お願いだよ、そろそろコンビニで買うご飯にも飽きてきてたんだ」
何を急に言い出すかと思えば、こいつは…
断ろうと思えば、その隙もないほどに頼み込まれたから、仕方なく承諾した。
すると、ぱあああっと効果音が見えるほどの笑顔を向け、ありがとう、と手を握られる。
気安く触んな、と手を振り払うと、そいつは少し寂しそうな顔をしながらも、またすぐ普通の笑顔に戻った。
また違和感を感じたが、それには気付かないフリをし、残りの飯を口の中に押し込んだ。
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