アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
17
-
なんでこいつがここにいるのかと不思議に思いつつも、出たら絶対面倒なことになると考え、無視しようとした。
「あれ…またいらっしゃらないですか?」
またって何だよ。
内心溜め息をつく。
まあでも無視を続ければ、こいつもそのうち消えるだろう、と玄関から離れる。
ピンポーン………
ピンポーン…
ピンポンピンポンピンポンピ…
「うるっせー!!!」
「あ、いらっしゃいました?」
何回も押されたチャイムに我慢できず、思わずドアを勢いよく開けてしまった。
目の前にいたのは、やっぱりニコニコと笑う男だった。
「お前、ここに俺がいるって分かってやってただろ!!?」
「あはは、そんな訳ないじゃーん」
絶対嘘だ
だって覗き穴から見た時に間違いなく目が合ったし
なんか、ニヤニヤしてたし
無視したら諦めると思っていた俺が甘かった……。
「てか、なんでお前がここにいんだよ」
「え?あぁ、俺ね、上に引っ越してきたの」
「………いや。いやいやいや、何の冗談…」
「ホント、ホント〜。何なら部屋来る?」
「……遠慮する」
部屋に来るまで言われたら信じざるを得ない。
まじでか……。
なんで学校でも捕まって、家でもこれ?
俺も心の休まる場所が欲しいんだけど…。
「っていうかさ、お弁当作ってもらうのに器とか渡してなかったじゃん?」
「…そんな話してたっけ」
「だからさ…」
無視かよ。
さり気にその話を無しにしようと思った俺を華麗にスルーして、玖村が持っていた紙袋から、弁当箱を取り出す。
「これ。俺の弁当箱だから、はい」
「お前、やっぱ俺がここに住んでるの分かってたんじゃねーか!!」
「だって、2週間くらい前にご挨拶しようと思って来たのにさ〜。誰も出てこないし。
あ、ちなみに他のとこにはもう挨拶済ませてるんだけど。
それから何日か後にまた来ても、まだ反応ないし。
そしたら今朝、超絶可愛い子がこのマンションから出るの見てさ。
そしたら学校で会うって。もうこれ運命じゃんね?」
いや、話脱線しすぎだろ。
お前は女子か?
そんな一切聞いてないことべらべらとドヤ顔で喋られても、うざいだけだし。
「で、学校からの帰り道で藤代くんの後つけてたの。そしたら、途中から、あれ?って思ったんだけど、案の定このマンション入っていって。
まさかって思ったらこの部屋入っていくし」
「は…すんなりとストーカー発言された……?」
「その時にピンポンしよっかなって思ったんだけど、お弁当のこと思い出して。じゃあ後でいいやって思って、今来た」
得意気に話すこいつに、割と本気で引く。
とりあえず、後をつけられてたことに一切気づいてなかったことが、俺は大分ショックなんだけど。
明らかに引きつった顔でこいつを見ても、笑顔で弁当箱を押し付けられるだけ。
「ってことで、これ、はい」
「何その押し付けがましい……」
「何言ってんの、合意の上でしょ?」
「あんなの、俺に拒否権無かったじゃねーか」
「…ふーん」
頑なに拒否したがる俺を、スッと急に冷めた目で見下ろし、口元をニヤッとさせる男。
あ…これやばいやつだ
「っ…わかった!作るから!その顔やめろ!」
サーッと血の気が引いて、再び部室でのあの雰囲気をまとったこいつに、俺は思わず口走ってしまう。
すると、玖村はコロっと笑顔に変わり、
「そう?じゃあ、はい。苦手なものとかは無いからさ。美味しいの頼むよ」
と、笑顔で弁当箱を渡してくる。
まだ躊躇しながら、仕方なくそれを受け取ると、玖村は自分の部屋に帰って行った。
かと思えば
「苦手なものは無いけど、肉好きだから、肉入ってるのがいいな〜」
「あーもう!わかったから消えろ!」
エレベーターの方から言われ、そっちを睨みながら怒りをぶつける。
じゃ!と言って、今度こそエレベーターに玖村が消えた。
「……何やってんだ、俺」
なんで今日初めて会った奴にこんなに振り回されてんだろ。
受け取った…というより、無理矢理押し付けられた濃い青色の弁当箱を見つめながら、また大きく溜め息を吐いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 51