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独り占めしたい②
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「淳。今日の放課後、顔を貸せ」
「うぇっ!?今日?」
掃除時間に俺は淳を誘った。今日は女子供と話し込む予定だと知っていて、誘ったのだ。
「何するの?」
「ン、……本を……探している本があるんだが、図書室が広くて見つからない。お前にも加勢を頼もうと思ってな」
「うーん、今日じゃないとダメ?」
「急ぐ」
「僕じゃないとダメ?」
「……駄目だ」
「う~~~~~ん」
本なんて出任せだった。ただ淳に二者択一を迫りたかっただけなのだ。
『お前はあいつらと俺、どちらを選ぶんだ?』
「……じゃあさ、藤吉さん達に…」
「なに~?宰次様図書室行くのか?丁度良かった。おれも本を探そうと思ってたんだわー」
淳が女子の名前を出したその時、佐藤が俺の肩を叩いた。「藤吉さん達に」何だったんだ?クソッ、馬鹿佐藤、大事な所で遮りやがって!
「本はおれと二人で探そうぜ宰次様」
「は……!?」
おのれ佐藤、俺は貴様に用はないんだ
「淳は藤吉達と先約があったもんな?」
「あ、うん……。宰次、それで大丈夫?」
「大ー丈夫大丈夫。ちびっこいのが二人居ても、上の棚には届かないだろ?」
「佐藤貴様ァ!!」
「おぉ怖い怖い」
「そっか。佐藤が手伝ってくれるなら安心だね。僕もちょっと…全然大した事じゃないんだけど、用事があるから、今日はそっちに行くね。また今度手伝うよ、ごめんね宰次」
「……あぁ。わかった」
結局淳の答えを聞けぬまま、俺は佐藤と読む予定もなかった本を探す事になった。
「宰次様さあ、分かっててやってたよな?」
人けのない哲学書の一角に来ると、佐藤は本棚を物色しながらボソリとつぶやいた。
「何の話だ」
「淳だよ淳。困ってただろ」
「……フン、貴様には関わり合いの無いことだ」
「いやいやいや。淳おれらの友達だし」
「……」
「まぁ、お前も一応。そっちがどう思ってるかは知らねーけど」
「…………フン」
カント、ヘーゲル、ホッブズ、ルソー、ニーチェ
俺も佐藤も適当な本を手に取り、流しては戻す。おそらくこいつも「探している本」など無い。
「人を試して楽しいか?」
「……黙れ」
「淳もさぁ、ああしてるけど自分が試されてた事くらい気付いてると思うんだわ。普通は気分良くないと思うぞ、あいつは変態だから知らんけど」
「人を気安く変態呼ばわりする奴の説教か、有難いね」
「そりゃどうも」
「……」
「……」
「宰次」
「なんだ鬱陶しい」
「お前が淳大好きなのは構わんけどな、」
「はっ!?誰が!!」
「あーハイハイ。語弊がありますね。ハイ。……そっちに悪気が無いのも分かるんだけどさ?」
悪気?
「淳は、お前の母親じゃないからな?」
「……?当たり前だ」
佐藤の言っている意味が分からず、胸に少しのしこりをのこしたまま家路についた。
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