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悪意の種から③
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「淳……俺が仇を取ってくる。やられた事全部、十倍にして返してやる。だから教えてくれ、あいつらお前に何をした?何を言ってきた?」
擦れた頬を包むようにそっと触れると、淳はピクリと顔をしかめた。
痛む部分に触れてしまったのだろうか。
俺への拒否反応だったならばどうしよう。
「何も……。別に良いよ、大したことじゃないし、気にしてないし」
「淳!」
「待てよ宰次、状況はおれがちゃんと後で説明するから、落ち付けって」
食い下がる俺を見かねて佐藤が割って入ってきた。
「……あんまり色々言わないでいいから」
「言うべき事かどうかは、おれがちゃんと判断する」
二人の不透明なやりとりを前にして、もどかしさが胸を焦がす。自責の念も相まって、説明もまだの内から芋瀬憎しと拳が震えた。
「あの野郎……八つ裂きにしてやる……!」
知らず心から漏れ出した言葉を聞いて、淳がピシャリと言い放った。
「宰次はもっとよく考えて」
「考える……?」
「君はこの一ヶ月ちょっとの内でもう二回、喧嘩騒ぎを起こしているんだよ?これ以上何かやらかしたら、それこそ君の信頼は地に落ちちゃうと思わないの?」
「そんな事、関係ない……!」
「あるよ!だって宰次、変わるんだって言ったじゃんか!」
淳の叱咤に全員が目を見開いた。
「……他人なんて、無責任に面白おかしく噂を広めていくんだ。だから、本当にやましい事はしちゃいけない。おおごとになれば学校だっていよいよ処分をしてくるかもしれない」
そんなの嫌でしょ、嫌なんだよ僕は……。
そう言ったきり、淳は俯いてしまった。
「宰次……」
佐藤の視線が「淳の気持ちを汲んでやれ」と語ってくる。うるさい、そんなの分かっている。分かっている……。
「……分かった。とりあえずは保健室だ。話は佐藤…後で聞かせてくれ、よろしく頼む。池田と林も、色々有り難う、迷惑をかけた」
煮えたぎるような気持ちを押しやり、とりあえずは淡々と、今自分がすべき事を片付けようと決めた。
淳は矛を収めた様子の俺を見て、ほっと表情を緩めていた。……が、あいにく俺は芋瀬を黙って見過ごすつもりはない。
俺は淳に相応しい親友になるのだから、喧嘩はもうしない。
正々堂々、芋瀬を潰す方法を…、必ず考え出してやる……!
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