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見学②
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『池田、どうしてそんな事を言うんだ。全員あんなに力を合わせて頑張った仲間じゃないか。仲間を信じないでどうする!』
一年経ってもありありと浮かぶ声、姿、風景。
さっさと消し去ってしまいたいのに、嘲笑うようにそこに居続ける記憶。
***
オレが怪我をしてボロ負けした運動会。「仲間」の現実を目の当たりにしてから数日。
誰も面と向かっては何も言わない。けれど明らかに以前と違う距離、空気。肌で感じる疎外感。ヒソヒソ声、笑い声、全て自分に向けられている気がした。
この日もそう。
『サッカーやる人ー!』
『ハイハイハーイ』
『池田くん……は、無理だよなぁ』
――ンだよその小芝居
『別に? 足、ハヤクナオルトイイネ』
マ、今更治ラレテモ ッテ感ジダケドネ
***
『お前ら池田に何かひどい事をしたのか?』
『何もしてません。足が早く治ると良いねって言ったら急に池田くんが怒って……』
――こいつ……
『池田。悲劇の主人公気取りもいい加減にしろよ』
『先生、ぼくらは大丈夫です。きっと池田くんが一番傷付いてるから……』
――お前ら、卑怯だ
『仲間が庇ってくれているのに卑怯とは何だ。はやく謝りなさい』
――そんなの嘘だ。猫かぶりやがって。
『池田、どうしてそんな事を言うんだ。全員あんなに力を合わせて頑張った仲間だろう。仲間を信じないでどうする!謝れ。今すぐ謝るんだ』
――嫌だよ。そいつ笑ってるじゃねえか、見ろよ。なあ後ろ見ろって
『池田!はやく謝れ!仲直りするんだ』
『池田クン……信ジテルヨ、僕タチ仲間ダモンナ?』
――うるさい、うるさいうるさい
アヤマレ、サア、ハヤク!ナカマダロウ!
***
「仲間を信じろ」
そんな『脅迫』僕はしないよ。
―そんな風に言う奴が居るなんて思わなかった。オレの気持ちなんて分かる奴、居ないと思ってた。
「くるし…」
「あっ、……悪い」
淳の様子に気付き、池田は慌てて感動に震える腕を解いた。
「もぉ……池田ってば、ケダモノ♡」
「……」
今そういうフザケ要らねーから。
池田は不機嫌にそう言いかけて、目の前のあまりに温かな笑顔に思考ごと止められてしまった。
淳は分かっている。今この瞬間、池田の心が軽くなった事を。そして、本人より先に照れ隠しをする程にそれを喜んでいる。
「うっせ、バーカ」
池田は心の中の氷塊がどっと崩れ落ちるのを感じていた。
「――ところで池田、皆にすっごい見られてるよ」
先程淳に抱きついたせいだろう。
練習していた生徒の幾多の視線がつきささる。
「ゲッ……み、見てんじゃねぇよ!」
「そうよ!アタシ達見世物じゃないんだからっキイィ!」
「お前何で急にカマキャラなんだよ!やめろよ話ややこしくなるから!」
「あはは」
「あははじゃねーよバカ!ホモ!バーカ!」
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