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ホールドミータイト①
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体育が終わり、Dクラスはぱらぱらと教室へ戻っていく。腰を重くしている池田に淳は声をかけた。
「戻らないの?」
「……、」
「――じゃあさ、グラウンドに忘れ物が無いか見ながら、ゆっくり戻ろう。ね」
「……ン」
差し出された手に掴まり、引っ張り上げられて立ち上がる。
淳に色々と感じ取られている事、気を遣われている事。心疾しいような、楽になるような。池田はしっくりくる言葉を見つけられないまま、淳の手をしみじみ握り返した。
……そうだ。コイツ、足捻ってるんだっけ。体育を見学する位だ、痛くない筈ないのに。
「お前ってホント、ヘラヘラしててよく分かんねぇよな」
全然そんなキャラじゃねーけど、こういうのを漢気って言うんだろう。なんか……イイな、そういうの。
池田は心の中でひとりごちる。同時に、関係ないクラスメイト相手に古傷をふりかざす自分は、その対極に居るような気がした。
「え?何の話?」
「……お前いいよ、歩きまわらなくたって。教室戻ろうぜ。」
「うん、……?」
混乱した様子の淳がおかしくて、池田は情けない心内とは別に少しだけ笑ってしまった。鼻の一つでも摘まんでやろうかと手を伸ばした、その時……全力疾走の影が迫って来た。遠くからでも分かる気迫に二人はぎょっとする。
「宰次!?」
その早業ぶり……ものの三分で教室へ行き、着替え、戻って来た計算になる。激しく切れた息を整える姿は、漫画ならばゴゴゴと効果の付きそうな凄みを纏っていた。
「ど、どうしたの、そんな急いで忘れ物……?」
恐る恐る声をかけようとする淳を押し退け、池田は前に出る。
「ンだよ、クラスリーダー」
「……池田」
次の瞬間、地面を蹴り上げ……池田を力強く抱きしめる宰次。
「ギャアア!!」
「ひゃああ♡♡♡」
二色の悲鳴が校庭に響き渡った。
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