アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1-16
-
その現象は、帰省先の近所でも同じだった。
空港から、タクシーで母の実家に向かう。
到着すると、祖父や祖母が暖かく迎えてくれた。
玄関先で、両親が二人と話していると、悠の背中から声が聞こえる。
きっと近所の住人だろう。
「あら、ぼく迷子?」
悠は、向けられた言葉に答えようと振り向くと、目の前には、50代後半であろう、白髪混じりで長い髪を一つに束ねた老婆が一人立っていた。
その老婆と目が合う。
すると、一気に顔つきが代わり、声音もトゲがあるものに変化した。
「あなた、日本人?」
「日本人です」
普段英語で生活しているが、家での日常会話は日本語なので、すらすらと答える。
「そう・・・、でもそんなはずないわ。だって瞳は灰色よね、ハーフに見えなくもないけど・・・、とにかく気持ちが悪い」
一言悠に投げ掛けると、その老婆は向かいの家へ入っていった。
その後も、周囲の反応は同じだった。
家族で近所を散歩していると、向かってくる人間は、悠の目を見ては、不思議がったり、怪訝な顔を向けた。
海外で普通だった瞳が、日本では普通ではないことに対して、悠は不満を感じた。
両親や祖父母に目について質問しても「そんな気にしなくていいわ、母さんたちは、全く気にならないもの!物珍しいだけよ」と言うだけだった。
そんなある日のことだ。
自分に向けられる目線に、苦痛を感じて、引きこもりがちになっていた悠は、母に「少し、外の空気を吸っていらっしゃい」と言われ、家を追い出されたときである。
悠は、なるべく人が居ないところへいくため、実家の裏にある森林へ入っていった。
森の中は、鳥の鳴き声が響き渡り、木々の間から差し込む日差しが、心地よかった。
まるで世界に人間が、悠一人になってしまったような感覚に陥ってしまう。
しかし、今の悠にはそんな感覚が安らぎに感じてしまった。
森を散策していると、開けた土地が見えてきた。
「きれい・・・」
目先には川が広がり、様々な色のコスモスが咲き誇っている。
一歩足を踏み入れようとした時、川辺に人が一人しゃがみこんでいるのが見えた。
悠は、咄嗟に茂みに隠れようとする。
しかし、足元に落ちていた小枝を踏んでしまった。
パキっと高い音がなる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 30