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過去形 3
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バカみたいに卒業式の日に相応しい辺り一面の桜の咲く道を、俺と立花は二人肩を並べて歩いた。
たまに、はしゃぎながら俺達の横を走り去っていく同級生達は最後の学生を楽しもうと、笑顔だった。
でも、そんな笑顔が俺から見たら、ものすごく残酷なものに見えた。
「桜、綺麗だな」
俺はそう言って、桜の木から落ちてくる桜の花びらを掴もうと、手を伸ばした。
桜の絨毯ができそうなほど、桜はヒラヒラと沢山舞い散っている。
「間宮って、桜が綺麗とか思える感性あったんだな」
「チビのくせに生意気じゃね?」
「うるせぇ」
俺がゲラゲラ笑うと、立花は俺の脇腹を軽く殴る。
「いってぇ…」
「いい気味だ」
ふっ、と口元を緩めて笑う立花は、綺麗だった。
「すぐにそんな怒んなよ」
「怒らせるお前が悪いだろ?」
「そうか?」
「ああ」
立花の返事を最後に軽い会話のようなものが終わった途端、俺達に無言が走る。
桜の舞う音、……風の音か。それだけが響く。
もう歩く気にもなれなくて、俺は真ん中で立ち止まった。
少しして立花は俺が立ち止まったことに気づき、立花も少し先で立ち止まり俺の方に振り返った。
「…間宮?」
俺の名前を呼ぶ立花の一つ一つを、俺の思い出に刻み込む。
俺の心境なんてとても知らない顔で、立花は突然立ち止まった俺に首を傾げた。
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