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過去形 6
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「おい、間宮。いつ退けるんだよ」
立花が話す度に、立花の背中が揺れる。
俺は、ある事を言おうと決心して、小さく笑う。
「なあ、立花」
「なんだよ」
「俺さあ」
少し息苦しい体勢のまま、俺は深呼吸した。空が桜の木に邪魔されて、よく見えないが、空と桜に向かってニッと笑った。
「──ずっと立花の事、好きだった」
「……は?」
大きい独り言のように言って、俺は戸惑っている立花の背中から降りた。
「外国に行っても元気でやれよ」
立花の顔を見ずに、俺は後ろにいる立花に背を向けて手を振った。
ポケットに手を突っ込み、大きな欠伸をする。
人生初の告白は、曖昧なもので終わった。
静かに桜道を歩いていると、後ろからバタバタと走る音が聞こえてきた。
俺の後ろで止まったかと思えば、突然腕を引かれ、立花が目の前に来た。
「間宮」
「……なんだよ」
「なんで過去形なんだよ」
俯いて、ボソボソと立花が呟く。
「……は?」
「なんで…っ……今言うんだよアホッ!もっと、っ……もっと早く言えよ!」
俺の両腕を掴み、立花は俺の両腕を荒々しく動かす。
そう叫んでいる立花は、いつも俺をバカにしてくるような瞳ではなくて、純粋に気持ちをぶつけてきている瞳をしていた。
ボロボロと涙を流す立花を見て、俺はやってしまった、と思った。
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