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月が綺麗ですね 7
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少し長く感じた数え切れない程のキスを終えたあと、僕達は何も言わずに見つめあった。
もう、幼なじみへ戻る事は出来ないと、僕達は思ったんだろう。
「…………佳人」
重い沈黙を破るように、僕は佳人の頬を撫で、名前を呼ぶ。
「……なに、翔太」
僕が口を開く寸前、辺りが暗くなる。佳人から少し視線をずらし、空を見た。
月が雲に隠れたようだ。
「───…月が綺麗ですね」
そう呟くと、佳人は少し驚いたあと、ニコリと微笑む。
「………本当だ。月が綺麗ですね」
僕達は、見えない月を見えているかのようにそう言葉を交わしあった。
僕達はもう、…………。
「翔太。ねえ、本当はちゃんと言って欲しいよ」
「…………ごめんね」
僕が謝ると、佳人は悲しそうに僕の頬を撫でる。
「ごめんね、佳人…。愛してるよ」
さっきと違い、少し暗くなった空間の中にある佳人の髪の毛に触れる。
そっと壊れ物を扱うように、髪の毛に触れる。
辺りは明るくならない。月は、まだ雲に隠れている。
それはまるで、僕達の未来を表しているようだった。
「ごめんねってなんで謝るの」
「僕達は、…見えているはずの未来を裏切ったんだよ。もう、後戻りは出来ない……だから、謝った」
……いや、僕に至っては…戻ろうとは思ってない、という方があっている。
そんな僕の答えを見透かしたように、佳人は小さく笑う。
「……大丈夫だよ、翔太。……俺は、戻るつもりはないんだ」
「…………奇遇だね、…僕もちょうど……そう思った所だよ」
僕がそう言ってすぐに、僕達はまた、暗い中でキスをする。
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