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僕じゃないから 4
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でも、僕の期待というものは、シャボン玉のようにパチンと割れる。
「……秋…、ごめん。…俺も黙っていたんだけど……」
翔は真剣な目をして、僕の手を握った。
グッと込み上げてきた涙を堪えるように、翔の方を向いて口角を無理やりあげた。
「………何も言わないで。…多分、僕が聞きたくないことだから」
「…………え…?」
「……本当に…、ムカつくよ……」
翔が、なにが?と言う前に僕は、翔の胸ぐらを掴んで自分の方に引き寄せ、お互いのファーストキスを無くしあった。
ファーストキスは柔らかくて、冷たくて…切なくて。
レモンの味とはほど遠く、少し苦かった。
「…っ………」
翔は顔を真っ赤にさせると、口元を腕で隠す。
今の僕にとっては、その反応だけでも、その場で飛び跳ねたい位に嬉しかった。
でも、そんな衝動を抑えて、僕は精一杯の笑顔を翔に見せる。
「じゃあね、翔。…ずっと好きだったよ」
何かを言いかけた翔を無視して、僕は急いでリビングから抜け出し、玄関へゆっくりと向かう。
翔は追いかけてこないって分かってる。そんな勇気があれば、今頃僕といないだろうし。
不思議と、涙というものは流れてこなかった。むしろ、どこかふわふわと、気持ちのいい感じが自分を取り囲む。
多分、これは達成感と似てる。
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