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「もう、しないの?」
戻ってきた八重島は、僕から少し離れてベッドの端に座った。
少し待ってみたけれど、特に何かしてくるつもりはないらしい。
「病人に最後までするつもりはないよ。
それにさ、真冬に聞きたいことが沢山あるから」
聞きたいこと。
八重島が聞きたいことはわかる。
でもそれは、僕が言いたくないことで。
言いたくない理由は、八重島が離れていってしまうと思うから。
いくら口では大丈夫だとか言っていたとしても、人は変わる。
僕は、それが怖い。
「今まで、どうしてたの?」
真っ直ぐな目で、八重島は僕に問う。
「⋯⋯ずっと通って頂いていたお客さんがいて、その人のところにいました⋯」
「仕事で?」
首を縦に振る。
いくら冷静に努めようとしても、声が震えて強く絞められた首の部分がズキリと痛む。
「前よりも痣が増えてるよね。
酷いことされてたんでしょう?
そんなになるまで仕事させるなんて、おかしいよ。やっぱり、きちんと店の人と話しあって相談し「駄目ですっ!」」
大声で叫んだ自分の声が、部屋の中に反響して、脳に直接響く。
あれをしちゃ駄目、これをしちゃ駄目。
駄目という言葉で、僕は今まで自分を縛って押さえつけてきた。
だから、大丈夫。
まだまだ、我慢できる。
そのはずだったのに、
「僕には人権なんてないから、体を売ることしかできないから、お金返すためには仕方ないんです」
こんなこと言ったら八重島さんはもっと心配するに決まっているのに、僕の口からは言葉が溢れ出てしまう。
言葉と一緒に温かい雫が頬を伝った。
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