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初めての男(舞夜)
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高校に入学してから初めての夏休み。ひと月程も休みがあれば、借金を大きく減らせるかもしれないと躍起になり、金を持っていそうな女と必死に関係を持った。朝帰りのキャバ嬢や暇を持て余した高級街の若妻、夜には癒しを求める三十路のOLや会社役員の年増の女。とにかく複数のネット掲示板を駆使して毎日稼いだ。
多い時は1日で5人と会った。中には愚痴を聞いたりキスや添い寝だけで終わることもあったから、体が限界の日はそういった女を選んだ。
「はー、さすがに筋肉痛だな……」
歩く度に痛む腰を擦りながら待ち合わせ場所のカフェまで歩く。
1週間で50万以上を得た。そこから生活費を差し引いたとしても十分な収穫だ。
しかし手当り次第に女を漁り調子に乗った俺は、とうとう悪い男に引っ掛かってしまったのだ。文字通り、悪い男に。
きっかけはいつもと変わらない掲示板だった。何度かやり取りをして自撮り写真を送ってもらい、女だということを確認してから本人と会う、そんな流れで関係を作っていた。
写真と顔が違う女もいたが、可愛く写るように撮られたものや別人の写真というのは日常茶飯事で特に気に留めていなかった。俺はその日も疑うことなくカフェへ入ったのだ。
確かに女だった。背が俺よりも高く、少し低めの掠れた声が色気のある美人だと思った。写真と全く違わない、品のある女だった。
躊躇することもなく2人でホテルへ入ると大胆にも女から仕掛けてきたが、馬鹿な俺はそこでようやく気がついたのだ。女装をした変態野郎だということに。
「マヤちゃん、可愛い男の娘は嫌い?」
どこからか出した札束で素肌を撫でられ靡いてしまった。この変態野郎は羽振りが良く、前払いで諭吉を3人くれるものだから、俺の機嫌は上々で男に股を開いた。
予想を上回る痛みと苦しさで半泣きになりながら受け入れた。見た目は完全に女の野郎は「マヤちゃん可愛い」と訳の分からないことを囁きながら優しく俺を抱いた。
終わってから更に、ホテル代と処女代として諭吉を数枚手にした。今回だけだと考えていたが、決して手酷く扱わず多額の報酬をくれる男に気を良くした馬鹿な俺は、数日後に約束を取り付けた。
それから男も盆休みに入ったのか毎日会うようになり、何故か時折衣服や食事も与えられた。
女との間では珍しくもない報酬だったが、男が男に物を買い与えて何が楽しいのか俺には理解出来なかった。
外を歩けば蝉が五月蝿いほどに鳴いていた。必死に鳴いて雌を求める声に嫌悪が湧いた。子供の頃は蝉取りだって楽しくしていたというのに。
ホテルに入り部屋へ向かう。昨日は女装姿だったが、今日は男の気分のようだ。
「待たせたなー、聖子ちゃん」
女装の時に男が名乗る名前で呼ぶと眉を顰め、あからさまに嫌そうな顔をした。年齢も本名も自宅も知らない、たった1週間前に出会ったこの男を兄のように慕い始めていた。セックスをする男を兄のようだなんて、笑える話だが。
「悪い悪い、そんな怒んなよ。コウ」
「昨日は俺のことそうやって呼ぶし嫌がらせだろ」
「はは、当たり」
コイツといるのは居心地が良かった。行為は苦痛でも食事や会話、ショッピングは楽しかった。最も男は会話の中でプライベートなことは殆ど話さなかったが。
「今日は何すんの?」
コウとのプレイは至極普遍的だった。触れ合ってキスをして前戯もそこそこで、何度か抱き合う。そんなものだったが、今日はどうやら趣向を変えてみたくなったらしい。
「縛っていい?大丈夫、軽くだから。たまには刺激的なことしたいだろ?」
悪戯を思いついた子供のような顔で笑う男の要望を俺は聞き入れた。拘束されるくらいなら我慢出来るし、見て楽しむようなそれくらいのものだと思ったから。
やはり俺はまた、直前まで何も気が付かなかった。
「ふ……ぅ……やだ、やめろっ!」
拘束された手と足では、逃げようともがく事も出来なかった。シャツ1枚すら脱いでいないコウの手には鋭く銀色に光る針のようなものが握られていた。薄いゴム手袋をつけた、細長い指が俺の乳首を捉える。
「ちょ、まっ……マジでやめろって!ぶっ殺すぞ!!おい!!」
「威勢が良いのは分かってたけど大人にその口の聞き方はないんじゃないか?」
コウの目は今までに見たこともないくらい輝いて見える。その理由がお遊びでふざけている楽しさなのか、この行為への興奮と喜びなのか。それが分かる程度には俺も馬鹿では無かったようだ。
「うるせぇ変態!クソ、離せ、触んなクソジジイ!!」
「はは、まだ年寄り扱いされる歳じゃないよ。取り乱しすぎだな」
掠れた声で発せられる穏やかな口調に一段と腹が立った。思うように動けない苛立ちと、コウが施そうとしている行為への恐怖に涙が浮かぶ。
「大丈夫、穴を開けるのは慣れているんだ。お前も綺麗にしてやるよ」
美しい笑顔だった。子供の頃見せられたどんな絵画の女よりも妖艶で吸い取られるような美しさだった。
「っ…………!!!」
声にならない程の痛みに視界がチカチカ光った。痛みに喘いでいるうちに胸元には金属が通り、冷静になる頃には拘束が全て外されていた。
「うぁ、いたいっ、コウ、痛い、しぬっ…………」
「お前は大袈裟だな。チワワみたいだ」
「ぐっ、ぁ……はぁ、あー……」
体は自由なのに痛みとショックで動けなかった。体内を犯され激しく揺さぶられる度に胸の傷が痛む。
「マヤ、綺麗だよ」
恍惚としたように囁く声が聞こえた気がした。
この日ばかりは意図的に媚びた甘い声ではなく、だらしなく口を開いたまま涙を流し、嗚咽混じりの汚い声で喘いだ。
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