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④
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木村が先に喫茶店を出て行ってから、約数分が経過した。
先程、木村が言っていた言葉が宮田の頭の中で、繰り返される。
*****
「なぁ、幕之内」
宮田がジムを出て行ってから一歩のテンションが下がりきっている事に千堂は気にかける。
「……はい」
「なぁ〜んか、ワイが悪い事したみたいであんま気分良くないんやけど〜」
「……そんな、千堂さんが悪い事した訳ではないですよ」
言葉では千堂にフォローをいれる一歩だが、千堂からすればそれが皮肉に聞こえて仕方ない。
かと言って、この場の雰囲気を暗くしたのは自分自身なんだというのは千堂自身自覚していた。
そんな暗くなった場に、今日初めて顔を出す人物がジムにやって来た。
「よぉ、一歩!千堂!」
片手を上げて二人に近付いてきたのは、先程まで宮田と喫茶店に居た木村だった。
木村は数日前、試合を終えたところで今は休暇中である。それを知っていた他のジム生徒達は「お久しぶりです」「木村さん、お疲れ様です」と何人か木村の周りに集まっては挨拶を交わしていた。
軽い挨拶を済ませ、木村が一番に視線を向けたのは一歩にだった。
どこか、浮かない顔をしている一歩の表情を見て予想していたのかあまり大きな驚きはしなかった。
「…木村さん、お疲れ様です」
木村の姿を今になって認識したのか、一歩があどけない返事を返すと木村ははぁ〜と大きな溜息をついた。
「…予想はしてたけどさ、だいぶダメージきいてるんだな」
木村がなんの事を言っているのか、分からなかった一歩だったが隣で聞いていた千堂は木村のその言葉でピンときたのか、少し口を尖らせた。
「木村さん、宮田におうたんやろ」
「お、ご名答」
ニヤっと口元を緩めた木村に千堂は、頬を膨らませる。
「なんか、ほんまワイが悪者みたいやわ」
「まぁ、そんな気にする事でもねぇさ。結局は本人達が腹くくるべきだと思うしな。な、一歩!」
そう言って高笑いをした木村が一歩の肩にポンッと触れる。その直後、肩に触れた木村の手を一歩はがっちりと手で掴んだ。
「木村さんっ!宮田君に会ったって……どこで会ったんですか!?教えてください!」
突然の一歩の切羽詰まった様な大きな声に、木村も千堂も驚く。
「どこっつってもー……さっきまでは、喫茶店に居たけど」
「喫茶店ってどこの喫茶店ですか!」
「ほ、ほら。俺がいつもお前や鷹村さん達と行くー……って、おい!一歩!?」
一歩の凄みに押され木村は場所の説明をする。も、話し終える前にはもう木村の目の前には一歩の姿が見当たらなかった。
「………なんや、あんなん見せられたらワイの勝ち目なんかないに等しいやんけ…」
未だ呆然としている木村の隣で千堂はボソリとそう呟いた。
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