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A Butterfly.1
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足首に着けた鈴がシャンッと鳴るたびに人々の目を引いた。
街の中心にある広場では数人のジプシー達が奏でる音楽に身を任せ、華やかに、そして艶やかに舞う。
観ている者に溜め息を吐かせるその壮麗たる集団の中で、一際視線を集める人物がいた。
「何の騒ぎだ」
城のバルコニーから街を見下ろす男が鬱陶しそうにそう呟く。
「はい。どうやらジプシーの一行かと。今朝、入国の確認が入りましたので」
「…ロマか」
【ロマ】とはジプシーを卑下した語陰でもあり、ロマニー系の移動民族が多くみられた事から由来する。
歌と踊りで性を売る彼女達に町の女は疎ましそうな目を向け、この国の次期国王であるアルベルト皇子もまた、そんな一人だった。
「追い出しますか?」
「そうだな────いや、待て。あの者は…もしや男か?」
「は……っ!?確かに…そのようですね」
色鮮やかな衣装を身に纏い、女達に混ざって白い素肌をさらすその人物は口にナイフを咥えている。
それを巧みに扱いながら羽でも生えている様な軽やかさで妖艶に舞っていた。
どうやら観客のほとんどが彼の舞に魅了されているようだ。
「…!」
アルベルトはそんな男と一瞬目が合う。
強く退けを取らない自信に満ちた獣の眼差し。
それは彼の興味を引くのに十分過ぎるものだった。
「…………面白い。」
「アルベルト様…?」
「あの男を連れて来い。今すぐにだ」
「はっ…!かしこまりました!」
アルベルトに逆らう者は誰もいない。
幼い頃から欲する物は全て手にし、逆らう者は容赦なく処罰される。
父親である現国王ですら彼を飼い慣らす事はできず、彼は実質上での支配者だった。
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