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「エリス…」
「心配しないで。オレは大丈夫だから」
曲芸を終えた彼女達はエリスを取り囲み、皆一様に不安げな表情をしていた。
「だけど皇子のご所望なんでしょ…?彼は冷酷非情な性格だって噂よ」
「なんでも、わざわざ遠くから招いた踊り子ですら気に入らなくて首を刎ねたとか…」
この国の皇子、アルベルトの噂はエリス自身も耳にしていた。だが彼は臆するどころか彼女達に笑みを返す。
「死を間近に感じたことなんてもう何度もあるんだ、今更恐れるものじゃない。それに、オレがそんな下手を打つと思う?」
エリスには自信があった。皇子は自分を必ず手元に置きたがると…。
それだけの術を、彼は兼ね備えている。
「おい、早くしろ!」
キャラバンの外にいる迎えの兵士が別れを惜しむ彼女達に苛立って声を上げた。
「それじゃお姉さん達、今までありがとう。お元気で。会うのはきっとこれが最後だと思うから」
「ええ…。いつもあなたの無事を祈ってるわ」
彼女達からの最後の言葉に"必要ないよ"と彼は笑顔で答え、僅かな荷物を持ってキャラバンを後にした。
そうして兵士に連れられて向かった先はもちろん城だ。
(ここが東ローマ最大国の宮殿か……)
大きな城門を見上げ、エリスは一度歩みを止めて深呼吸する。
あの時、あの瞬間から…。彼はこの日の為に全てを捧げてきた。
エリスが見渡した限りこの宮殿は高い城壁で覆われ、配置された兵士の数は異様なまで多い。
その様子から、ここの主は用心深く隙を現し難いことが窺える。
「ここで止まれ。荷物を預かる」
兵士が有無を言わさずエリスの手から荷物を奪ったのは、城内に入ってしばらく歩き一際大きく重圧感のある扉の前まで来た時だった。
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