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「この西の塔には資料館や議会室、東の塔は各国の要人や客人などをもてなす為の部屋や施設が揃っております」
翌日。一日の謹慎を解かれたエリスは改めてエドリオの案内を受け、宮殿の中を歩いていた。
今度は逃げ出すこともなく、エルスは静かにエドリオの後に続いて回った。
そして無表情な兵士を両端に配置された廊下を見つけ、ふと疑問を口にする。
「あの、この奥は?」
「……あなたには関係のない場所です。ここから先は王に許された者のみが出入りする事ができる場所です」
エドリオははっきりとは口にしなかったが分かり易い説明だった。
つまり、ここから先は王族の居住スペース。
王の部屋があるならアルベルトの部屋もこの先にあるだろう。
エリスは鋭い視線で先を見つめ、内に何らかの想いを秘めていると違う方角から足音が聴こえてきた。
「エリス!」
「!アルベルト様…」
西の塔に続く廊下から数人の部下を引き連れたアルベルトがエリスに声をかけて近付いた。
彼のその明るい声と表情からは機嫌の良さが伺える。
「嬉しそうですね。何か良い事でも?」
「あぁ。予定より早く面倒事か片付いた。つまりお前と遊んでやる時間が出来たという事だ」
「!では、あの諸国を?」
二人の会話にエドリオが割って入ると、アルベルトは深く頷き口角を上げる。
「ああ、制圧した。先程軍の司令官から知らせが入ったんだ。これで"西"に仕掛けやすくなる」
「!!」
"西"。それは東の帝国と対立し、争いを繰り返している西の帝国を意味した。
どんなに平和そうに見える国でもいつ戦火の真っ只中に変わるか分からない。
この時代はそんな狭間にある。
「エリス…?」
「血生臭い話は…苦手です」
「そうか。それは悪かったな、覚えておこう」
アルベルトがそう言ってエリスの髪に触れようとした時、廊下を守る兵士が動きを見せその先から騒々たる足音が響き彼が舌打ちをする。
「エド」
「承知しております。エリス様、こちらへ」
エドリオに促され、エリスは廊下の端に控えて頭を下げた。
この行動で誰が近付いているのか、顔を知らずともそれを察するのは簡単だ。
「────アルベルト」
「ご機嫌麗しく…マッシマ王」
「嫌味な事を…。お前の戦略が正しかったようだな」
エリスは二人のやり取りを聞きながら目線だけを上げて男を見た。
威圧感を放つその男は紛れもなく征服者の威厳を保っている。
「あなたのやり方は古く生温い。本気で西という大国を手中に治めるつもりでいるなら、あのくらいは当然かと」
「っ口を慎め、この道楽息子が…!ならばお前がそれをやって退ければ良かろう!」
「ご冗談を。俺にはあなたの様な真似はできませんから」
どこまで言っても嫌みな言葉を口にするアルベルトに王の怒りは留まることを知らない。
そしてその矛先はやがて、視界の端に入り込んだエリスへと向いた。
「新しい猫か…。相変わらず己の快楽には従順のようだ。おい、顔を上げよ」
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