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用意された服に着替え、エリスは緊張から心なしかソワソワと落ち着かない様子で陽が沈んだ外を眺めていた。
今更男と寝るくらいでこんなにも心は乱れされない。
自分の胸に手を当て、エリスはやがて祈るように目を閉じた。
願い、誓い、祈り、決意。
エリスが何を想ったのかは彼のみが知る。
「エリス様、失礼します」
「…!はい」
入室を知らせる召使いの声に返事をして振り返ると次々に料理や酒が部屋に運ばれ、あっという間にテーブルの上が一杯になった。
「何を呆けてるんだ。口が開いているぞ?」
「アルベルト様…!何なんですかこの量は?」
「ん…?少ないか?」
「逆です!」
召使い達と入れ替わりで部屋に訪れたアルベルトはエリスの指摘に首を傾げ、ドカッとソファーに座り込んだ。
「俺にとってはこれが普通だ。酒を注げ」
「…………」
アルベルトが金で作られたカップを手にして催促すると、エリスは黙ってそれに従い膝を着いて酒を注いだ。
葡萄を熟成させた深い香りが鼻先をくすぐる。
「何をしてる?」
「え……?あなたが酒を注げと…」
「お前は召使いじゃない。そんな所に膝を着かず俺の隣に座れ」
「っ!?」
自分は皇子と並べるような身分ではない上、そのような扱いを受けるとは考えた事すらない。
そんなあからさまな動揺をするエリスを彼は笑ってソファーに抱き上げた。
「なっ…!?」
「俺が座れと言ったら座るんだ」
半ば強引に座らされ、半分抱き抱えられたままの状態で居心地が悪そうなエリスを無視し、アルベルトは注がれた酒を飲み干すと再び酌を催促する。
エリスはそれを数回繰り返している内に彼が初めて自分と二人だけで居る事に気付いた。
アルベルトは"そのつもり"でいる。
そう確信した途端焦らされている気分になり、ベッドへ誘おうと口を開きかけるがそれよりも先にアルベルトが動く。
彼はなぜかエリスの目の前にカップを差し出したのだ。
「お前も飲むか?」
「!いえ…、酒は口にした事がありませんので」
「飲んだことが無い…?一度もか?」
「……はい」
答えてすぐエリスには嫌な予感が過ぎった。
それはアルベルトがニヤリと笑ったからだ。彼の次の言葉を予想するのは容易い。
「呑んでみろ。イイ酒だ」
「っ……、私のような者があなたの酒を飲むなど──」
「わざとらしい言葉で逃げるな。それに俺は"呑め"と言ったんだ」
「……分かりました」
ここでもし彼の機嫌を損なえば後々面倒だ。
エリスはそう判断して彼からカップを受け取り中身を見つめる。
映り込んだ自分の顔を揺らす深い赤色の液体が彼の目には禍々しく映るも息を止め、それを一気に喉の奥へと流し込む。
「──ケホケホ…ッ!」
「っははは!一気に呑む奴があるか!それでどうだ?初めての酒の味は」
「っ……、酸味があって…、渋いです」
咳き込んだせいで涙目になったエリスは口の中に残る独特な香りが嫌なのか口元を押さえた。
すると笑っていたアルベルトは何かを思い付き妖しく口端を上げる。
「ま、その通りだな。だがこれを甘くする方法がある。…知りたいか?」
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